▼ 中編
濡れて熱を持った唇を、佐助が密着するような深い口づけで塞ぐ。
誘うように開かれた政宗の口端から二人の唾液が流れ落ち、それは政宗の首筋にも達した。
それを追うように舌先で首をくすぐれば、ドクンと大きく脈がハネるのが分かる。
「…っ、くすぐった…んっ」
「あれっ、これだけでもう感じちゃった?お酒で体…あっついよ…?」
先程うっかり耳元で囁かれてときめかされたのが無性に悔しかった佐助は、またも同じようにやり返す。
耳朶を軽く甘噛みしてわざと息を吹きかけると、顔を背けるようにして身を捩る政宗の反応は佐助をより煽る材料となった。
襟口に手をかけて、そのまま肩下まで滑らせる。
しっとりと汗ばんだその滑らかな胸元まで愛撫を重ねると、政宗の細く長い指が佐助の後頭部で髪をくしゃりと掴む。
「心臓…ドクドクいってる。興奮してる?」
「テメェは…してねぇのか…よ、ひ…っ」
胸の突起を舌先でつつかれて、つい嬌声を漏らしてしまった。
「してるに決まってんじゃーん、二ヶ月ぶりの政宗だよ?その可愛い反応見てるだけでイっちゃいそ…」
酒の効果も手伝って、上気した政宗の頬が一層彼を艶めかせている。
鍛えられ引き締まった胸元がピクリと跳ねたかと思うと、舐め回されて心地が良いと、熱い吐息で佐助に伝える。
「んあっ…さすけ…」
「んー、その顔ヤバいね。なーに?」
「おまえ、んっ、武田の宴…すっぽかして大丈夫…なのか…?」
「あぁ〜大丈夫だよ、ちゃんと『俺様』が出てるはずだから。今ごろきっと旦那たちのお守りしてるよ」
答えながら、佐助は胸元で遊ばせていた冷たい指先を腹部、腰元まで移動させた。
腰を支えて持ち上げてやり、乱れて役目を失った腰帯をスルリと引っ張り取る。
腰骨から、そのまま太ももまでゆっくりとなぞるその掌に、しなやかな肢体は吸いつくようだ。
「ふっ…分身か…。忍って奴は…便利なもんだな」
「そうでもないんだよ、分身の方がこっち来たがっちゃって…喧嘩しちゃったよ、自分と。」
自分と喧嘩…なんて間抜けな絵面だろう。
それまで与えられていた快感にうっとりとしていた政宗が、その場面を想像して吹き出した。
「Ha!そりゃ面白ぇモンを見逃した」
「でも…勝って良かった、分身ごときにこんな可愛い政宗を見せるのは悔しいからね〜」
「くっくっ…自分と喧嘩してoriginalが負けたとあっちゃ、もう忍の仕事なんかできねぇなぁ?」
「俺様は真剣なんだよ?俺様の分身だって、政宗のこと愛しちゃってんだから〜俺様以外に体許したりなんかしないでね??」
「愛っ…!?っつーか!分身でもこんなこと出来んのかよ…へぇ」
ニヤッと笑う政宗の表情に不安を感じた佐助が問う。
「ちょっと、試してみたいなんて思ってないでしょうね?俺様そんな事になったら悔しくて死んじゃう」
「どっちだってお前なんだろう?」
「それでもだーめ!今目の前にいるのは俺様なんだから、ちゃんと俺様のこと見てよ…ねっ?」
そう言って自身の高ぶった熱を、政宗の中心に擦りつける。
既に固くなったソレに突然ダイレクトな刺激を与えられ、暗く静かだった部屋に甘い喘ぎ声が響いた。
ニィ…っといたずらな表情で政宗を見下ろす佐助が、ゆるゆると腰を動かして布越しに自分たちを触れ合わせる。
と、同時に下帯の端から手を滑り込ませて先走りで濡れそぼったそこを指先で軽く弄んだ。
「ちょっ…さすけ…あっ、んんっ…ここ、じゃ…あっあっ」
「なに?もっとはっきり教えてくれないと…ココ触るの、やめちゃうよ?」
言葉とは裏腹に一気に下帯を外されて、今まで軽く触れる事しか許していなかったソコを握り込まれると、途端に腰をビクつかせて声を上げる。
「も…ここじゃ…やあっああっ、だ・・・め」
「あぁ…ごめんね、そういえばここ、畳の上だった。背中いたい?でも…もーちょっとこのままその顔見せてよ」
握り込んだ手の動きを上下に促すと、トロリと滲みだすものが掌に絡む。
親指を先端に押し付けながらソレを塗り拡げる動作が出す、くちゅ…という水音が、政宗に羞恥心を抱かせた。
「わ、すごいよここ、もうすっかりぐっしょりだね…感じちゃってかーわいー♪」
「んなこと…はぁッ…聞きたくね…くうっ、うあ…はっ」
「俺様に触られてそんなに気持ちいい?一回出しておこうか、我慢しないでいいよ」
「えっ…待っ…ああああっ」
返答を待たずに手の動きを早める佐助。
緩慢だった快感が急に猛烈な勢いで政宗を攻め立てる。
堪らず佐助に縋りついた政宗が、次第に顔を引き寄せて来て、欲するままに佐助と舌を絡ませた。
欲望に従順になった政宗の姿が可愛く思えて仕方ない。
もっと見たくて、つい手の動きを緩ませてしまう。
「あっああ…ん…やっ、いやっ…だ…あっ」
「はいはい、嫌じゃないでしょ〜」
「うあっ…あっ…はぁっ、やめっ…」
「うん、やめないよ〜」
「んう…も、だ、めだって…さす…けぇ…っ」
イキたくてもイケないように動きを抑制されるせいで、体はより強い刺激を求めて余計に息を上げる。
そして頬を紅潮させ、うっすら涙を滲ませる。
「んー、ほんっとヤバいわその顔…色気ありすぎ…。もっと見てたいけど、コレ以上焦らしたら怒られちゃうかな?もうイっていいよ♪」
一気に扱かれてぐちゅりと泡立つ先端に爪を立てられ、息をのんだ政宗が佐助の手の中で熱を吐き出した。
ぐりっと最後まで弄り倒され、敏感になった体への快感としては、与えられたそれは凄まじすぎた。ガクガクと体を震わせてぎゅっと目を瞑ると、額に優しく口付けられる。
「…はぁっ…はぁっ…やだって、言ってんのに…」
「ごめんごめん、あまりにも可愛くってついいじめたくなっちゃった。でも、随分気持ち良かったみたいだね〜、見ててゾクゾクしたよ」
「…!?こんっのドS野郎っ…」
「悦んでたくせに〜!ねぇ、俺様にもシてよ」
頭を撫でながら、佐助が政宗を抱き起こす。
そのまま肘に引っかかったままだった寝着ごと政宗を抱え上げて、畳の上から寝具の上へと移動する。
自身の襟元を掴んで横に引き、あっという間にその肌を晒した佐助が腰を下ろして、寝具にへたりこんでいる政宗に手招きした。
「やるなって言われたって…今さら止まれやしねぇよ」
膝と手をついて、四つん這いでこちらに向かってくる政宗の放つ色香は犯罪級だ。
不覚にもその表情にときめいてしまっただなんて、今まで散々強気で政宗を煽ってきた佐助にとっては、とても口に出来ない事であった。