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 01.not

人とは違う付き合い方をしている、という自覚は初めからあった。だからこそ親しい友人にしか関係を明かさずにいたんだし、その友人達の前でも特別態度や接し方が変わる事は、2年経った今でも絶対にない。
俺達は前も今も変わらず仲のいい友人同士。
他人から見えている俺達はそれでいい。
元々、人前で手を繋いだりするのは苦手なんだ。照れ臭いのもあるが、俺にとっては他人から冷やかされるというのが最も気に入らない事だというのが一番の理由だ。

しかし恋人の有無を異性から聞かれれば当然「YES」と答えておく必要はある…というのも、自分で言うのもなんだが、俺達は全く違う外見と性格をしていながら、お互い他人よりも目立つ上に周囲に人が集まりやすく、慕われやすい。
素直に答えて予防線を引いておかなければ、恋愛感情を抱いて絡んでくる異性も少なくない。
過去に恋人の有無を隠していたせいで何度か異性と面倒な事になった経験がある。それを踏まえて、お互い「恋人は居る」と明言するべきだという結論に至った。

…面倒事は嫌いだ。

だからと言って、こいつが俺の恋人です、と堂々と紹介したくはない。あえて紹介する必要もない。それで何の不自由も無いし、会えない訳ではないどころかしょっちゅう一緒に居るから恋人らしい事も十分出来ている。満足してるんだ。それで十分だろう?

それに、いつかは終わりが来る関係。
こんなこと、死ぬまで続けられるもんでもないし、続けられないからこそ今一緒に居るんだって考え方は、俺もアイツも同じなんだと思っている。おそらくそれは間違いじゃない。

だからこそ、今回の事は少し驚いた。
いや、不快だとすら思った。
何で今さらそんな事を言い出すんだ?
恋人になってからもう2年になる。ケンカはしたけど今まで何の問題もなくやってきた。2年という決して短くない時間を一緒に過ごしてきたというのに、初めてアイツが何を考えているのか分からないという状況に陥って、ただひたすら困惑した。

おかげですっかり不機嫌になった俺がベッドの端に寝転んでふて腐れている後ろで、飲みかけの紅茶のペットボトルを転がしている恋人が、長い沈黙を破ってようやく口を開いた。


『伊達ちゃん、時計買いに行こう』


…誰か俺に、コイツの思考回路を見せてくれ。




(2014.02.07)

短くちょっとずつ続きます。




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