梅雨の日



しとしとと雨の降る梅雨の時期。外に出るのが限りなく億劫だと感じるのは、あまり外出をすることが無い私は勿論のこと、外に出るのが好きなアウトドア派な方々もだろう。

休日に雨が重なったのは幸か不幸か。朝はまだ曇りで留まっていたが、昼を過ぎた辺りからぽつぽつと、次第にごうごうと雨が降ってきた。私は午後から買い物に行く予定だったのを取り止め、家でのんびりゲームをすることにした。


5th.梅雨の日


テレビから発せられる音が、雨粒が窓を叩く音を打ち消す。音と音が相殺する。
そんな中でもインターホンの音がきちんと聞こえるのは、現代科学の結晶か。
休日、かつ雨の日に私の家のインターホンが鳴る、という奇妙な事実を不審に思いながらも(私の家を知っているのは、不本意ながらゆうこだけだ)、私は家のドアを開けた。

「なまえ!よかったぁ、居たぁ…!」
「ちょ、ゆうこ!?なん…っ、ずぶ濡れじゃない!」

ドアを開けると、そこに居たのは我が幼なじみのゆうこと、獄寺に山本にツナ。…うん、なーんとなく予想できた。
大方ツナとゆうこの補習に二人が付いて行って、帰りにゆうこの家に寄ろうとかいう話になったは良いけど、あまりに雨がひどくて、かつ傘を持っていなかった→私の家で雨宿りってとこだろ。

「なまえ、ちょっと雨宿りさせてもらっていい?」
「あ、雨宿りってか、その前に乾かさなきゃ…。タオル持ってくるから待ってなよ!?」

ばたばたと風呂場に行って湯槽にお湯を入れる。ついでに棚からタオルを五六枚引っ掴んで玄関に駆ける。

「ゆうこ!獄寺君に山本君にツナも!ほら、早く拭いて!」

ぽいっとタオルを放り投げ、ゆうこ達に渡す。ありがとー、と言ってるゆうこにお風呂入れてるから!と言って、私はキッチンの方へ走った。
食器棚からマグカップを四つ出して、紅茶をいれる準備をする。一つ目をいれている途中で、ゆうこから「今何時ー?」って声が聞こえてきたから「二時半ー」って答えると、「マジで!?」って返された。

「やっば!ドラマの再放送始まる!つ訳でなまえ私帰るね!」
「…ウチで見ていけば?」
「そうしたいけど録画予約忘れたんだよー!だから録画しながら見るの!」
「…あー、はいはい。解った。じゃあ玄関の傘使っていいよ」
「ありがとなまえ恩にきる!」

それはさながら嵐のように。ばたばたと出ていくゆうこに続くように、「ゆうこ待てよ!」だの、「一人じゃ危ないぜ。俺も一緒に家まで行こうか?」だの聞こえてくる。

「……嵐だよなぁ」
「え…っと、ご、ごめんねなまえちゃん。急に押し掛けちゃって…」
「ん、いーよいーよ」

ゆうこがトラブルメーカーなのは昔からで、いい加減そんな日常に慣れてしまった。

「さて、ツナ。紅茶いれたけど、飲む?」
「あ、うん!」

だから私は、この状況を作ってくれたゆうこに感謝するべき、なのかしら?

「ツナ甘い方が好きだよね。ミルク多めだけど味大丈夫?」
「あ、うん!俺これくらいが好きだな」
「…よかった」

私の容れた紅茶 (市販のインスタントだ)でも、おいしそうに飲んでくれるのを見ると、こっちも顔が綻ぶ。

「ああ、そうだ。今お風呂沸かしてるから、お風呂入っていくと良いよ」
「え!?そ、そこまでしてもらう訳には…」

…ま、それが普通の反応だよな。でもこのままだとツナ風邪引きそうだし。

「いや、ね。せっかくお風呂いれてるし、雨もこの調子だと止みそうに無いし、ね。風邪引かないようにさ」

あ、服は男物がいくつかあるよ!って言ったら、じゃあ、ごめん、使わせてもらうね、ってツナが言った。
ちょっと強引な気もするけど…まあツナに風邪引かれるよりはいいかなと自己完結(ツナごめん!)




風呂場と脱衣所での会話

(なまえちゃん…そういえば下着も洗ってる、ん、だよ、ね…?)
(?うん、今洗ってるよー?)
(えと、あの、その、平気、なの…?)
(…ああ。大丈夫ー。家事はよく手伝ってたからね。お父さんの下着とか見慣れたし)
(あ、そうなんだ…)


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