秋の話


簾をしまって久しくなる。風は段々冷たくなり、過ごしやすい季節が来る。

「庭の木も綺麗に色づいたね」
「ああ、本当に。見事なものだ」

やはり、執務室から見る庭は、一番綺麗だと思う。遠くの空に鱗雲。木々は赤く色づき、紅葉がはらはらと舞う。芝生は落ち葉に覆われ、さながら赤色の絨毯のように。

「ここまで見事に紅葉すると、言葉も出ないものだね。むしろ、言葉で表現することが無粋に思えてくるよ」
「ただただ、綺麗と言うほか無いもんねえ」

歌仙さんがほう、とため息をつく。飽きることなく眺めていられそうだ。
さくさく、軽く踏みつける音に、思わず庭を見やれば、堀川くんや清光くんたちが、落ち葉を集めている様子を見つける。少し離れた場所では、光忠さんと鶯丸さんが竹箒を手に落ち葉の山を作っていた。畑の方からは、籠に山盛りのさつまいもを入れて運んでくる和泉守さんと陸奥守さん、長曽祢さん。これだけ条件が揃えば、私だって想像はつく。くすりと笑みを零すと、隣からは大きなため息が聞こえた。

「やれやれ……、みんな花より団子と言うことか」
「紅葉よりさつまいも、だね。ふふ、食欲の秋か」
「全く……」

しかし、心から呆れているわけでもないんだろう。その表情が緩んでいるのを、私はばっちりと目撃している。歌仙さんご飯好きだもんね。

「行こう、歌仙さん。早くしないとみんなに食べ尽くされちゃうよ」
「……ああ。そうだね。特に陸奥守が育てるさつまいもは絶品だ」
「んふふー、焼き芋楽しみだなあ」

他にも余ればご飯に混ぜても良いし、お菓子にしても良い。君も食欲の秋のようだね、という初期刀の呆れた、どこか優しげな声を聞きながら、私は軽い足取りで庭へと向かった。
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