京都の話


進軍状況を纏めたデータを眺め、唸る。ステージを繰り上げ、武家の記憶、元弘の乱、つまりは5-1に進軍しているが、今の第2軍、粟田口の部隊ではなかなか踏破が難しい。敵の強さも段違いになり、短刀と脇差だけでは、敵大将のもとに着くまでに怪我を負ったり、刀装をはがされることなどざらだった。まして短刀は、刀装が一つしか付けてあげられない。いくら特上を積んだとしても、盾兵でもない刀装は、一撃で破壊されることもままあった。まして、検非違使も出現する。刀装も剥がれ、そのうえ検非違使に当たったときは、重傷者多数にもなる。
ううん、としばらく唸った後、私は決意する。

「どうしたの、なまえちゃん」
「第2部隊の5-1進軍は止めよう」
「えっ?」

驚いて振り返る光忠さんに、私は作戦の変更を伝えた。
そうだ、京都、行こう。


「えっと、つまり?」
「短刀と脇差は夜戦に強いでしょ? ほら、一応一軍でも出陣したことあったじゃない」
「ああ、僕たちは手も足も出ずに撤退を余儀なくされたけれどね……」
「まあまあ。で、ほら、あの時歌仙さんと堀川くんだけは、敵の投石を避けたり出来てたでしょう。それに、京都の序盤は敵もそう強くはなかった、と記憶してるから、今のレベルなら行けるかなって」
「なるほどね。確かに、全員70は越えてるからねえ」
「70越えると検非違使も一段強い編成で来るからね。今検非違使の出る鎌倉よりは、京都の方が安全かもしれない。何と言ってもまだ踏破してないから検非違使なんぞ出ようもないしな!!」

うまくいけば、敵陣を探しつつレベル上げを行えるかもしれない。幸いにして、京都のステージにレベル上限はない。もし踏破したとしても、検非違使が出るまで巡回していいし、聞いた話ではあるが、検非違使は編成上どうしても日中戦よりも夜戦の方が弱くなるらしい。ステージ6の検非違使が、短刀たちにさっくりやられていく様は柔らかすぎて怖いという。なら大丈夫じゃないか? と安易な考えではあるのだが。
……、まあ、6-1の検非違使心配する前にボスマス到達出来るか心配しないといけないけどね!! あの京都の布陣……碁盤に賽の目とか到達出来る気がしない……。

「じゃあ、編成は今のまま?」
「そうね、第一部隊から歌仙さんと堀川くんを入れることは出来るだろうけれど、今は別に急いで2人を連れていく必要も無いかな。うん、そのままで行こう」
「分かった。第二部隊にはそう伝えておくよ。じゃあ、明日からいよいよ京都の攻略だね」
「だねー。それと、第三、四部隊のレベル上げを集中しよう。加州くんや兼さんも引っ張ってこれるかもしれない。……彼らには、辛い地を踏ませてしまうことになるけれど……」
「大丈夫、彼らも場所の情報が出た時点で、覚悟はしているよ。……じゃあ、明日からの出陣はそのように。いよいよ、って感じだね」

光忠さんが勝ち気な笑みを浮かべる。自分が出陣できなくても、本丸のみんなが強くなって、新しい場所に行けるのは、彼もどこか刀としての本能を擽られるのかもしれない。

「うん。……いよいよだ」

市中、三条大橋、池田屋。近々日本号を入手できる6-4も追加されるという。全て夜戦の京都市街。粟田口の彼らがどう戦うのか、心配でもあるが、きっと彼らなら大丈夫だろうと、今まで彼らを育て上げてきた自信が、私を後押ししてくれる。
頑張ろう、と改めて心に誓った。
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