三人目の話


「日本号が来たので、お酒ください!」
「まだ実装の発表しかされてないからね?」

政府から新刀剣、もとい天下三名槍の最後の一振り、日本号の実装通達が来た。ということで私がまず本丸に言って発した第一声が上記の通りである。しかし私が言った言葉に即座に反応できるとは、この近侍やりおる。

「君が言ったんだろう、白以外の封筒は開封してても良いよって」
「ああ、そうだった。成る程、先に見ちゃってたか」

政府からの通達、向こうでいう公式・開発からの告知は、こちらでは封筒で投函される。どうやって届く仕組みなのかはいまいち分からないが。普段は茶封筒で届くが、白色の封筒は重要書類が入ってることが多い。普段私が、本丸にいる時間が片手で足りたり、下手をすると来なかったりもするので、茶封筒なら開けて良いと近侍の光忠さんには言ってあった。

「他のみんなには?」
「昨日届いてたからね、もう伝えてあるよ」
「そっか。蜻蛉切さんと御手杵くんの反応どうだった?」
「嬉しそうではあったかな。あとは博多くんが喜んでたよ。長谷部くんもちょっと嬉しそうだったね」

光忠さんから本丸の様子を聞いて、私は小さく笑いを零した。やっぱり縁があるものが来るのは嬉しいのだろう。博多くんの時の一期さんや粟田口然り。
広間のふすまを開くと、「主さん!」とぱっと顔を輝かせて駆け寄ってきたのは博多くんだ。勢いのままに抱きつかれたので、そのまま頭をわっしゃわっしゃしてやると、くすぐったそうに眼を細めた。可愛い。

「主さん主さん! 日本号が来たばい! 酒ば用意しとかやんね!」
「そうだね、日本号さん来たね! 酒の準備だね!」

だからまだ来てないってば……、とうなだれる光忠さんだが、まあ見逃して欲しい。新しい仲間が来るのは楽しみなのだ。

「というか、いくら日本号がお酒の伝承があるからって、君たちは酒にばかり目が行き過ぎじゃないかい?」
「何言ってるの、黒田の日本号だよ、酒飲まなきゃ失礼でしょ」
「日本号に酒ばあげんで何ばやると?」
「日本号だぞ、酒の用意は必須だろう」
「ああもう……酒飲み共め……って長谷部くんまで!?」
「なんだ、何かおかしなことを言ったか?」

しれっと会話に参加してた長谷部さん。どうやら台所にお茶を取りに行ってたらしい。博多くんが私から離れて「長谷部ありがとー!」と駆け寄っている。くっ……主よりも茶か……!

「お帰りなさいませ、主」
「ただいま、長谷部さん」

今日も笑顔が素敵である。どうやらうちの長谷部さん、顕現させた私が黒田家に縁のある地に住んでいるからなのか、若干黒田家の雰囲気が強めである。たまに博多くんと喋ってるときに博多弁が出ちゃうの主知ってるんだからな。

「まあ、主が楽しそうなら良いか……。お酒の準備はしておくよ、実装まで日がないだろう?」
「ふふ、いつもありがとうね、光忠さん。実装は11日だからあと5日も無いね」

正しくはイベントで先行実装なので、もしここで逃しても新ステージでの本実装で手に入れられるのだろうが、まあ、好機逸すべからず、だ。
11日までの予定を、光忠さんと博多くんと長谷部さんと話しながら組んでいると、背後で静かにふすまが開かれる音がした。振り返れば、お風呂上がりだろう蜻蛉切さんと御手杵くんが居た。「遅くまでお勤めご苦労様です、主」、「おかえりー」、とそれぞれらしい挨拶を貰う。

「ちょうど良かった。今、日本号についての話をしてたんだが」
「ああ、今度来るっていう。もう編成の話か? 気が早いなあ、あんた」
「といっても、もう5日も無いんだけどね。それにステージの子細ももう出てるから」
「ということは、主殿は既に編成案があると?」

蜻蛉切さんの言葉に、私は頷く。公式がレベル上げに使って良いよ! と告知してるのだ、存分に使わせて頂こうというものだ。

「今第3部隊に居る岩融さんを部隊長にして、長曽祢さんを組み込んで……あと、みんなが良ければ、博多くんと長谷部さんと御手杵くんと蜻蛉切さんで行こうかと」

黒田繋がり、三名槍繋がり。どうかと思ってみんなの顔を見れば、特に拒否反応などは無いようなので一安心だ。

「絶対、日本号迎えに行っちゃる!」
「ああ、そうだな」
「話には聞いてるが、実際どんなやつなんだろうなぁ、日本号」
「会うのが楽しみですな」

気合いも十分、良い感じだ。盛り上がる4人の様子を見ながら、さてじゃあ今日の仕事に移るか、と考えていると、主、と横から声を掛けられる。光忠さんだ。

「編成も良いけど、当日君の仕事は? 博多くんの時も遅れて一期くんに怒られていただろう?」
「はは、その辺は抜かりなく! ちょうど実装当日からお休み入れたからね!」
「つまりその日から連日お休みなわけだ」

たまたま重なってたって話だけどね! 偶然なんだがこれは縁を感じてしまう。

「また深夜まで潜りますか」
「今回もひと月程期間を設けてある訳だし、程々に、計画的にね」

はあい、と気の抜けた返事をすると、もう、と光忠さんが少しだけ強めに言ってくる。本当光忠さんが出来た近侍で嬉しい限りだ。さて、新ステージ情報で気合いも入ったし、今日もお仕事頑張りますか!
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