不安の話


「11日……」
「11日ですな」

「……さて、どうしたものかね」

政府からの通達で、博多くんが捕らわれているクッパ城もとい大阪城への立ち入りが11日に解禁されることが分かった。小判を集めて地下50階まで到達すれば、博多くんが手に入るのだとか。

「……マリオの不思議なダンジョン?」
「色々混ざってるしアウトだよ主!」

光忠さんから盛大なツッコミを貰ったが、程ほどに聞き流して書面に目を落とす。
大阪城と言えば、太閤秀吉殿のお城である。彼にゆかりのある一期さんにとっては、色々と難しいところだろう。今は聞けない台詞だが、「炎が、何もかもが!」という言葉にあるように、大阪城が燃え落ちたことは今でも大きな傷だろうと思っている。
弟に会わせてあげたいのだけれど、当の大阪城に連れて行って良いものか。
……まあ、それを言ったら回想のために新撰組の刀をゆかりのある地に連れてって、苦しそうな顔させてるのはどうなんだって話になるけれども。
彼らは、どうなんだろう。どう思っているのだろう。

「というわけでもうずばっと聞こうと思うんだけど、大阪城行きたいですか、一期さん?」
「はぁ……?」

うだうだ自分が悩むよりも聞いた方が早い。大体全員参加できるとか適正レベルとか分かってないうちから悩むのもばからしい話だが。
粟田口の新人を楽しみにしているのは私も彼も同じだ。だからこそ聞きたい。彼がどうしたいのか。それを加味した上で指揮するのが審神者であればいい。
私の考えを纏めて話せば、一期さんは少しだけ惚けた後、困ったように笑った。

「はは、主には色々と考えて頂き、恐縮ですなあ。……私は、出来れば自分の手で、弟と会うことが出来ればと思っております。勿論、無理をしようとは思いません。その際は、遠慮無く一軍と交代して頂きたい。彼らであれば、恐らく無事に最下層まで辿り着けるでしょう。ですがやはり、粟田口の矜持と言いますか、私が行きたいと、そう思っているのも事実です。……ですので、どうぞ、主の思うがままに采配を振られてください。我々は、それに従うだけです」

……、成る程、と頷いて、礼を言って彼の部屋を後にする。
一期一振本人がそう言うのであれば、問題あるまい。ステージが開放され次第、出来れば粟田口で組んで突撃したいものである。ま、子細何も分かってないんだけどね。

「というわけで、11日までは連日各部隊のレベルアップと、あと一軍はいつも通り演練と5-4で長曾祢さん探しね。11日は大阪城突撃します」
「ああ、分かったよ、主」

今週の計画を大まかに立てて、近侍の光忠さんへと伝える。お赤飯用意しておいた方が良いかなあ、と独りごちる光忠さんに、少し気が早いんじゃ無い、と言えば、君と一期さんほどじゃないよ、と返された。
新しい仲間を迎えるのが、楽しみである。
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