さよなら日常
「なまえー!一緒帰ろー!」
「堕ちろ。そして巡れ」
2nd.さよなら日常
「…………はぁ」
放課後、宣言どおり迎えにきたゆうこにより(昼間のことを覚えていたのか、一人で来てくれたのには感謝しよう)、私はこの物語の主人公、沢田綱吉宅にきていた。…ぶっちゃけツナは好きですよ?でも、それとこれとは話が別。
夢小説は好きだけど、逆ハー状態を望むわけじゃない。…ま、いっか。その辺りはこいつが全部かっさらってくだろーし。
「奈々さん今日はー!お邪魔しまぁす!」
「…お邪魔します」
「あらあら、ゆうこちゃんいらっしゃい!あら、そちらの子はお友達?」
「そうなんです!友達のなまえちゃん!」
「初めまして。いつもゆうこがお世話になってます。みょうじなまえです」
「はい。よろしくね。…ところでゆうこちゃんは、ツッ君に用事?」
「はい。そんな感じです。居ますか?」
「ええ、居るわよ。さ、あがって」
笑顔の素敵な奈々さんに癒されながら、地獄の三丁目へと続く階段を上る。目の前で鼻歌を歌っているゆうこを突き落としたい(止めてください)。
「ツーナー!入るぞっ!」
せめてノックはしようぜゆうこさん
ガチャリと開かれた扉の向こうに居たのは、部屋の主とその友人二人、そして家庭教師。
「あ、ゆうこちゃんとみょうじさん。いらっしゃい」
「お、ゆうこ!早かったのな」
「ちっ、遅せーんだよ。十代目を待たせんな」
「ちゃおっス、ゆうこ。後ろのやつは友達か?」
うわぁ、四者四様の反応だぁ。
「ちゃお、リボーン!さ、なまえ入って!」
「ここあんたの部屋じゃないでしょ」
我がもの顔でツナの部屋に入るゆうこを見て、私は溜め息を吐きたくなった。
「で、てめーは何者だ?」
座った私にちゃきり、と向けられた銃口。その大きな漆黒の瞳は射抜くような鋭さを帯びている。
ふ、と息を吐いた。
「私はみょうじなまえ。そこにいるゆうこの友達。出来れば名前が良いけど、まぁ、呼びやすいように呼んでくれて良いです」
端的に答えると、そうか、と言ってリボーンは銃を下ろした。そして不敵にニッ、と笑って、
「俺はリボーン。ボンゴレのヒットマンでそこにいるツナの家庭教師だ」
そう告げたのだ。
…あれか、暗にボンゴレ入れってか?…いや、それより試してる感じだな。もしかしたらゆうこがトリップしたの知ってる、とか?それで私も異世界の人間だって口滑らせんの待ってんのか?
「ほぉ。人並みに頭は切れるみてーだな」
…しまったこいつ読心術使えたんだ!
「え、ちょ、どういう事だよリボーン!」
「こいつもゆうこと同じ違う世界の人間なんだ」
「えぇ!?」
「まさかこいつボンゴレを狙って…!?」
「はは、ゆうこの友達だもんな!」
…あーもう煩いよ特に獄寺!ツナ残して帰れ!(ちょ)
「ね、ね、リボーン!なまえ気に入った?」
「ああ。なかなかじゃねーか」
好き勝手やってる皆を横目で見ながら、私はツナに話し掛けた。
「…いつも大変そうだね、沢田くん」
「いや、なまえちゃん程じゃないよ…。あ、さっき名前で良いって言ってたから、なまえちゃんって呼ばせてもらってるけど…」
わたわたと慌てるツナに、思わずくすりと笑いが零れた。
「うん、大丈夫。…じゃ、私もツナって呼んでいいかな?」
「う、うん!」
かっわいーなー!
ふにゃりと和んでいたら、唐突にリボーンから発せられた言葉。
「なまえ、ファミリーに入らないか?」
さっきのゆうことの会話である程度私のことを聞いたのだろう。その目は好奇心でいっぱいだ。
「な、リボーンさん本気ですか!こんな得体の知れないものを!」
「ちょっと待てお前の中で私は人ですらないのか」
天人、ってか?
「でも獄寺、お前同じ状況でゆうこの時は何も言わなかったじゃねーか」
「あ、あれは…っ!」
リボーンの言葉に獄寺の顔が真っ赤になる。解ってて聞くんだからリボーンも質が悪い。
「惚れた弱みだよね」
「うっせ黙れ女!」
「え、何ごっきゅん好きな人居るの!?」
「ごっきゅん言うな!」
「(この逆ハー娘)」
「獄寺、顔真っ赤だぜ?」
「煩せぇ野球バカ!」
天然+天然+ツンデレの攻防線はツッコミが居ないから終わらない。必死に止めようとするツナが可愛くて、ああ、たまにはこんなのも有りかな、なんて思ってしまった。(本当に極稀に、なら!)
「で、どーすんだ?ファミリーは」
「そうだねー。立ち位置的には門外顧問みたいなところでいいんだけど」
「(こいつ、どこまで…)」
「私さ、ゆうこから聞いても解ったと思うけど、面倒くさがりなんだよね。だから、…そうだね、次期門外顧問候補、なんてどうだろう?」
にっこり笑いかけてみると、リボーンは呆れたような溜め息を吐いて、苦笑した。
「そーゆーのも、アリかもな」