差異の話


ブラウザ上では見えなかったことに、本丸に来てから驚くことが多い。
例えば、景趣がなくても本丸は、実際に四季の移り変わりや時間での変化はちゃんとあるし、こんのすけは思ったよりももふもふだったし、何より。

「よお、大将。お疲れさん。今日は早かったんだな」
「薬研くん」

刀剣男士達の身長を知った。
画面の前で「短刀ちっこい粟田口可愛いたまらん撫でたい」、などと供述していたが、実際に会ってみると、予想以上に小さい子が多い。ゲーム画面ではあまり差が無いように見えても、実際は同じ短刀でも身長差は大きい。小柄な私でも撫でられそうな程低い子も多く、一番小柄な小夜くんは、小学1年生とほぼ同じ身長で、思わず職場に小夜くんが居る様子なんかを想像してみたりした。……それはそれで、見てみたいかもしれない。
逆に、短刀勢の中でも身長の高い薬研くんなんかは、私よりも少しだけ高かったりする。つまり、画面越しですら格好良かった彼が、実際目線の下では無く、同じ目線にあるとなると些かどころか結構照れてしまう。いっそ光忠さんとか、太郎さん、岩融さんレベルで身長が引き離されていれば、ここまでどきどきはしないんだけどなあ、なんて思ったり。

「薬研くんは、もしかして出陣準備してくれてたのかな」
「ああ、そろそろ大将が戻ってくる頃だろうと思ってな。他の奴らもすぐに出られるぜ」
「おお、準備が良い……!」

かちっと、粟田口揃いの青い軍服に身を包んだ彼は、流石としか言い様がない。まあでも、刀剣の付喪神だし、幼く見えるだけで実際は私より何百倍も長生きだから、私が流石とか言うのはちょっと違うのかも知れない。
私が頬を紅潮させているのを見てか、光忠さんが苦笑している。薬研くんは、に、と唇の片端を吊り上げて。

「なんてな、そんなのは口実で、出陣前に準備でばたばたしてたら、せっかくの大将と話せる時間が減っちまうだろ?」

ああああもう、こんなことさらっと言うから、だから本当油断できない!
決められた台詞、だけじゃない。その時々で彼らが考えたこと、感じたことがダイレクトに来る。これだから本丸は驚きばかりだと、火照った顔を隠すように俯けば、くしゃりと隣から頭を撫でられ、正面からは豪快に笑う声が聞こえた。
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