続承



あちらこちらにロックが掛けてあるものの、パスワードが解っているこっちにしてみれば、何の障害でもない。なまえが眠っているのを良いことに、あちこちのフォルダを覗き見していく。画像のフォルダにも鍵が掛けてあったのは、ただ単に見られたくないのか、異常に用心深い性格なのか。(彼女の性格からすると前者だろうと思われる)
その画像フォルダは、鍵が掛けてある割には少なかった。主に、風景の写真が目立つ。その他に、何枚か人が写ったものがあった。少年が三人と、少女が一人。黒髪の能天気そうな少年がブイサインをしている以外は慌てた表情をしているから、なまえが不意打ちで撮ったものだと予測する。

「これは……山本武に獄寺隼人、それに……ともせいゆうこ。とすると、」

このススキ色の髪を持った少年が、先程彼女が言っていた『ツナ』という少年だろうか。
もう一枚、彼だけが写された画像がある。純粋に笑っている、その画像。その画像から、その表情から、彼やなまえがどれだけ平和な環境で育ってきたかが解る。それを羨むつもりも、憎むつもりもないが。過去に『もしも』は存在しない。

「それにしてもなまえ……、あなたは几帳面なのか、大雑把なのか」

途中まではきっちり整理されてタイトルが書かれている画像も、ここ最近のは撮った日付がそのままタイトルになっている、つまり編集されていない。タイトルが書かれていれば、この少年が何者かくらい分かっただろうが。

「まぁ、一般人である彼女にそこまで望むのは期待しすぎですね」


ただ、この画像を撮ったとき、彼女はどんな思いだったのかと、ふと過る。




12th.続承




「………… ん〜……?」
「おや、目が覚めましたか」
「……は?」

うっすらと開いた視界に、赤と青のコントラストが映る。その言葉から推測するに、寝ていたらしい。……私のステータスに『ずぶとい性格』と付け足されるのも、近い将来かもしれない。どこのモンスター育成RPGだ。酸っぱいものは……うん、大好きというわけではない。

「……よくあの状況下で寝れましたね」
「あー、ゆうこのお陰で大概のことには驚かなくなっちゃったからなぁ」

想像してみろ、あの雲雀さんが自費でファンシーなぬいぐるみを買っているところを!(そうなるに至った原因がかの親友にあることは言うまでもないだろう)
…………あの衝撃に比べれば、もう、うん、結構驚かなくなったよ。

「……そうですか、」

あの、骸さん。いくら人が現実逃避してるからってそんな可哀想な子を見る目はやめてください。あれ、これ二回目じゃね?

「……っと、そういえば……」

そんなにしっかり見ていたわけじゃないけれど、多少なりと風景が変わったように感じる。それになんだか、空が、遠い。

「……一階?」
「ああ、そうでした。先程千種が血塗れで帰ってきましてね。動かすわけにもいかなかったのでここで治療をしてまして。それで、あなたも三階に置いていたままだと脱走されてしまうかもしれないでしょう?」
「手足縛った本人が今更何を言う。つか三階から飛び降りるとかどんだけ非常識なんだ私は」
「なのであなたも一階に連れてきたんですよ」

無視か。私の発言は無視かこの野郎。
って、もうそこまで話進んだの!?早くね!?

「ちょっと骸ちゃん、結局その子何なわけ?」
「……え……?」

あたふたしていた私に敵意に近い感情を含んだ声が向けられる。私が知る限り、このタイミングで骸さんを「骸ちゃん」等と呼べるのは一人。

「お金持ってるって訳でもなさそうね、冴えない顔してるし」

……悪かったな。

「クフフ、彼女は人質ですよ、M.M。ボンゴレ十代目を手に入れる為のね」

怪しく笑う骸さんに納得したのか、そ、と短く告げて、彼女は居なくなった。ツナ達の所に向かったのかな。
そういえばさっきは気付かなかったけど、黒曜メンバーが勢揃いしていた。こんな近くに居たのに気付かないとかホント私神経マヒしてきたんじゃなかろーか。

「さて、なまえ。あなたにお礼を言っておきましょう」
「……………………は?」

突如、満面の笑みで告げられたそれ。何だ、私骸さんの利益になることした?

「千種の目が覚めたとき、僕は彼からボンゴレのボスと接触したという情報を聞きましてね。あなたのケータイの中にあったススキ色の彼の写真……あれがボンゴレボスだと、確認させていただきました。本当に、思わぬ収穫だ」


「…………なんだろう、今凄く自分を罵りたい」
「おや、あなたはそちらの趣味がおありで?なら早く言ってくださればよかったのに」
「違うわっ!」

ダメもう疲れた……!あの写真ホントにうまく撮れたから珍しく残しといたのに……!まさかこんな形で仇になるとは。

「なまえ、」
「………… 何ですか」
「千種がボンゴレボスと接触したとき、彼の他にともせいゆうこが居たそうです」
「…………え!?ゆうこ、雲雀さんと一緒に来てたとかじゃなくて!?」
「ええ。今、そのボンゴレとここに遊びにきてますよ」
「な……!」

驚いて二の句が継げない私の代わりに骸さんに返事を返したのは、闇からの声。

「ま、その女もあたしが倒しちゃうつもりだけど」
「おやおや……。珍しくやる気ですね、黄泉(ヨミ)」

それは、居るはずのない人間。

「だって女の子でしょー?めっずらしいじゃん、戦う女の子ってさ……!」

名を体で表したような、黄色の髪を持った、女の子。

「喧嘩と殺しの違いを教えたくて、ゾクゾクするわ」



…… 逆ハ最強ヒロイン(ゆうこ)の敵になる黒曜ヒロインだと思われる。

ツナ、お願い助けて私もう耐えられそうに無いよ……!




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