同派の話


「さて毎年恒例になりました新春シール交換。今回の交換対象は!」
「交換対象でうちにいないのは小豆長光と静形薙刀。さて、どちらにするんだい?」

どちらにしよう、と、歌仙さんに渡されたお知らせのチラシを手に悩む。実のところ、去年の夏に大幅な鍛刀改革……もとい告知があり、小豆さんも静さんもどちらも鍛刀で呼べるようになっている。いやあ、見慣れた一時間半から亀甲さんを呼べてしまうとびっくりしますよね……。
とはいえ、私の鍛刀苦手っぷりを重々に存じ上げている古参の面々からは、「貰えるものは交換した方が良い」と異口同音に言われる。とどめは博多くんの「本丸の資材のためにも交換ば勧めるばい」という言葉だった。無慈悲……!

「やっぱり順当に……実装順に小豆さんかなぁ……」
「その心は」
「スイーツ食べたい」
「素直でよろしい」

お気に入りのえぷろんが似合わない小豆さん可愛くない? ということで、わくわくを抑えきれない謙信くんをお供に、小豆さんの交換申請を行った。
貰った刀に力を込めて、一瞬の後に桜が舞う。

「わたしは小豆長光。きみは……すいーつ、すきかい?」
「だいっ好きです!」
「だいすきなんだぞ!」

顕現台詞に思わずかぶせる勢いで食いついてしまった。後ろから歌仙さんのため息が聞こえる気がするけれど無視だ無視!

「おっと……ええと、きみがあるじだね。となりは……謙信かな?」
「! あつき、ひさしぶりなんだぞ!」

わあい、と飛び上がって抱きつく謙信くんを、小豆さんは難なく受け止める。可愛い……無邪気な謙信くんも公式で保育士よろしくと言われる小豆さんも可愛い……組み合わせると倍で可愛い。

「さて、それじゃあ本丸を案内しようかな。小豆くん、初めまして。僕は燭台切光忠。長船派の祖の刀だよ」
「光忠……。なるほど、おなじとうはなのだね。よろしくたのむよ」
「うん、よろしく。僕は厨もよく使うから、もしスイーツ作りで困ったことがあれば、遠慮無く頼ってね」
「ふふ、たのもしいな」

あつき、ぼくもあんないするのだぞ、あつきがくるまでにこのほんまるのすみずみまでおぼえたんだぞ、と張り切って並ぶ謙信くんを挟む、小豆さんと光忠さん。

「あー、やっぱり縁がある同士が再会してるの見ると、審神者やってて良かったなあって思う……!」
「嬉しいことを言ってくれるねぇ」

柔らかく微笑む歌仙さんの隣で、私も頬を緩ませる。本当なら実装時に鍛刀で呼べたら良かったんだけどね! まあこればかりは運と縁なので仕方が無い。こうして呼んであげられる機会があるだけでも十分だ。

「さーって、じゃあ小豆さんにスイーツおねだりにでも行こうかな!」
「来たばかりの新人に主自ら負担をかけない」

今日のすいーつ、は僕の作で我慢して貰おう、僕のじゃ不満かい? と尋ねられ、めちゃくちゃ楽しみ! と叫ぶように答えた。


後日食べ比べた感想として、小豆さんは洋菓子、歌仙さんは和菓子だなあと言う結論になりました。どっちも美味しい!
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