引き換えの話


「お正月に貰ったシールの引き換えだね!」
「さてなまえちゃん、選ぶのはどの長船派に決めたのかな?」
「やだ、光忠さん顔が怖いよ……長船派の顔じゃないよ……」

確かに引き換えられる刀剣男士の中で、うちにいないのは全部長船派だけれども!

「落ち着きなよ、燭台切。そう迫っては決められるものも決められないだろう」

やんわりと歌仙さんがたしなめてくれる。ありがとう……伊達男の真顔怖かった……。
ふええ、なんてわざとらしい悲鳴を上げながら、シールで交換できる刀剣男士のリストを眺める。シールは欠かさず集めたし、引換所実装記念で追加も貰った。十分に余裕はある。
ところでピンク地に桜の花柄のシール、配布当時も言われてたけどお皿でも貰えそうな雰囲気あるよね。政府はお茶目さん説ワンチャンあるのでは。

「ええと、リストの中で、今本丸にいないのが……」

小竜景光、謙信景光、小豆長光。年始の鍛刀キャンペーンで小竜くん呼べなかったの、やっぱり悔しいけど鍛刀に強くなれないのは相変わらずだなって思ってしまった。……こうして諦めてるから来てくれないのかなー。

「順当に……というか、実装順で呼ぶなら、小竜くん、なんだけど」

なんだけども。こう、ちょっと、欲があるというか。私は隣に立つ光忠さんを見上げる。彼は、一つの瞳で私を見下ろして、目を瞬かせた。

「どうしたの、なまえちゃん?」
「……」

柔らかく、低く、心地よい声が耳をくすぐる。私が審神者に本腰入れるきっかけになった刀であり、その一番の理由は、これだ。

「やっぱり光忠さんの隣には謙信くん並べたいよね」
「謙信くん? ……まあ、来てくれるなら誰だって歓迎はするけど……」

実装順に選ばないの、几帳面の気があるなまえちゃんにしては珍しいね、と光忠さんは言った。

「まあ、私欲十割なんだけど!」
「私欲十割? 謙信くんを選ぶのが?」
「なまえ、まさかと思うけれどきみ、毛利藤四郎に影響受けたりしていないだろうね……?」

首を傾げる光忠さんと、胡乱げな目で私を見てくる歌仙さん。失礼だな! 確かに小さい子は可愛いけれど! 毛利くんみたいにふぎゃるまでは無いです! たぶん!!

「自信いっぱいに多分とか言わないでくれないかい、我が主ながら不安が先立つよ」
「ごめんて。……まあでも、誰が来てくれても嬉しいんだけどね。今回は謙信くんをお迎えするよ」

決めた。断言すると、二人は一緒に頷いてくれた。こんのすけを通じて連絡を入れ、引換所へと向かう。連れ立つのは、長船派の祖。シール12枚と引き換えに、一振りの短刀を選び、本丸へと持ち帰った。
光忠さんと、他、興味のある面々が見守る中、手の中に握った短刀からふわりと桜の花が舞う。

「ぼくは謙信景光。あまくみないでもらいたい!」

上着の裾が翻り、大きな丸い瞳が私たちを見上げる。少し高めの、男の子の声がしっかりと響いた。

「ようこそ、謙信景光くん!」
「待ってたよ」

私と光忠さんの言葉を受けて、謙信くんは一度瞬きをした後、「よろしくおねがいします!」と満面の笑みを見せてくれた。
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