大晦日の話


なんとか連隊戦も、年内に折り返しまでは行くことができた。まだまだ大包平さんお迎えには玉数が必要だが、目標も近づいてきたと思えば気合いが入る。
外は快晴。連隊戦と並行しながら、年内最後の大掃除に洗濯に、年末年始のごちそう作りにと、本丸の中は慌ただしい。

「去年から10人も増えたかあ。なんだか感慨深いねえ」
「今年一年、色々な出会いがあったからね。そうか、10人も増えていたか」

歌仙さんがしみじみと言うのを聞きながら、大広間を行き来する顔をぽつぽつと見やる。新顔さんに、極め修行を経た短刀たち。去年の年末からすると、色々な変化が目についた。

「今年はやっぱり、大包平さんの情報と、貞宗くんをお迎え出来たのが大きかったなあ」
「ああ、君は待っていたからねえ」
「ねー。それに、ちゃんと明石さんもお迎え出来て、来派の二人に会わせてあげられたのも良かった」

会えないことをあまり気にしていないように見えていた蛍丸くんと愛染くんだったけれど、実際に明石さんを見つけたとき、涙目で抱きついていたのは記憶に新しい。

「とはいえ、今年はまだ貞宗派の長兄が見つかってなかったね……」
「ああ、亀甲貞宗だね」
「とりあえずこの連隊戦でレベルを上げて、挑めればと思うんだけどねえ」

どうなることやらである。年越しの準備も忙しいが、戦に休息はほぼない。審神者のお仕事大変だ。

「まあ、戦ごとも大事だが、今は本丸の大掃除に集中しよう、なまえ。本丸も広くなったけれど、その分人手も増えた。今年はまた、賑やかな年越しになりそうだよ」
「……そうだねえ」

ぱちり、火鉢で炭が弾ける音がする。ばたばたと駆ける足音は、雪の降る寒さの中でもあちこちから聞こえてくる。

「あっ、なまえ! 倉庫の片付けは終わったぞ!」
「ありがとう、獅子王くん。じゃあ少し休憩したら自分の部屋の片付けに行って良いよ」
「ああ! なまえもお疲れ! 頑張りすぎんなよー」

軽く手を振って駆けていく獅子王くんを見送って、さて、と意気込む。

「私たちもここ片付けて、厨に急ごうかね」
「ああ、人手が増えるのは良いことだけれど、料理も多く作らなくてはいけないね」
「いっぱい食べるのは良いこと良いこと! 頑張りますかー!」

本丸の中から外から、絶え間なく誰かの声が聞こえる。
年がら年中、年の瀬ですら落ち着く暇のないこの本丸だけれど、だからこそ、私はここが好きだなあと改めて思った。
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