待ち人の話


「お、おおお……!」
「どうしたの、なまえちゃん?」

やばい、携帯を持つ手が震える。とうとう、とうとう来たのだ……!

「光忠さん」
「うん?」
「ちょっと鶯丸さんの部屋に行ってくるね!」
「! ということは……」

審神者に就任してからおおよそ二年。就任一年目に聞いた、「来年来ますよ」という言葉に期待して、今年の初めから待ち続けていた。この年の瀬、年末年始の大イベントに、満を持して来てくれたらしい。

「大包平、実装だよ!」


「そうか、あいつが来るのか」

興奮気味に伝えた私とは裏腹に、鶯丸さんはいつものように穏やかに笑ってお茶を啜った。お、おお……。なんか私だけ盛り上がってるみたいな空気だ……。

「今度はここで、大包平を観察出来るんだな。楽しみだ」

あいつはここでどんなふうに過ごすんだろうなあ、と鶯丸さんは言う。待っていたんじゃないの? と聞けば、そうだなあ、と彼は微笑んだ。

「待っていた、というよりは、来たのか、という気持ちの方が大きいな」
「ふうん……?」

首を傾げる私に、鶯丸さんは持っていた湯飲みを脇に置いてから、なんてこと無いように告げる。

「大包平は今年来る、と言ったのはなまえだろう。君の言葉だ、信じないでどうする?」
「っあー! もう! そういうこと言うのずるい!」
「ははは」

鷹揚に笑って、鶯丸さんは「菓子でも食べるか?」とカステラを差し出してきた。有り難く頂いた。ほのかな甘みが大変美味しい。

「とりあえず連隊戦頑張るね……!」
「ああ、だが、無理はするな。会えるようになった、というのが分かっただけでも、俺は十分だ」
「そんなこと言わない。大包平に話したいこと、たくさんあるって言ったの、鶯丸さんじゃない」

だから、いつもどおり、できる限り頑張る。それがここの運営方針だ。
鶯丸さんは、眼を瞬かせたあと、そうだな、と微笑んだ。

「俺が過ごした二年間を、あいつに聞かせてやらないとな」

とても、とても穏やかな声で、鶯丸さんは零すように言った。




「さーて連隊戦です大包平さん確定報酬だよやったねーってじゅうまんんんんんんん!」
「物吉くんが四万、膝丸くんが五万、小烏丸さんが六万と来て、大包平くんが十万かあ……一気に飛んだね」
「政府は年末年始に私たちを家から一歩も出さない気かな!? 玉数インフレしすぎだよおおお頑張るけどおおおお!」
「細かいことは気にするな、なまえ。そろそろ出陣か?」
「細かいかな!? うん、そろそろ出陣するよ! 行こう、鶯丸さん!」
「ああ。任された」
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