宍戸が出て行ったのと入れ違いで部屋に誰かが入ってくる。

それに気づいている祐季だが、体が重く起き上がれないでいた。


近づいてくるその"誰か"にキツく言葉を発する。




祐季「何しに来たんだよ
まだ、練習中だろ??」

「そんなに嫌か??」


祐季「一番来て欲しくなかったな、仁王」

仁「ククッ、俺も嫌われたもんじゃな」




眉間に皺を寄せながら仁王を見る。

黙って練習を抜け出してきたらしい。




仁「こんな機会じゃないと、逃げられてしまうからのぅ」


祐季「・・・・・・ずるいよ・・・、こんな時に・・・」

仁「・・・・・」


祐季「・・・・お願い」




お願いだから、どこにもいかないで

独りにしないで






薄れゆく意識の中、貴方の幻想を見た

触れると温かくて、生きていると実感できる


あるはずの無い事だとしても、無いという事を受け入れられなかった


君のことを傷つけることだとしても

もう少しだけ、このままで・・・・




祐季「・・・・ごめん、なさい」




時折聞こえる、その言葉は震えていた

誰に対しての謝罪かはわからないが

その度に、目尻からは一筋の涙が流れる

彼女には残酷なことをしているのかもしれない


それでも、顔を合わせる度に辛そうな顔をされるよりかはよかった




「そろそろ限界、かもね」

仁「!?・・・妃奈鹿か」


妃奈鹿「ここまで体調に影響するなて初めてだしね」




宍戸に祐季の様子を聞き、妃奈鹿も練習を抜け出してきていた。

今の状況を頭で整理する。


あんなに、仁王のことを拒絶していた祐季が、
涙しながら彼の胸の中で眠る彼女を見て察した。




妃奈鹿「2人とも出会わなければ、残酷な思いをすることもなかったのにね」

仁「・・・・・・・」




祐季の頭を撫でながら話しを続ける。




妃奈鹿「あなたを好きになれない理由、教えてあげる」


仁「祐季の元彼に似てるからじゃろ??」

妃奈鹿「それもあるわ
ただ、もう一つ、氷帝の彼等だけが知っている事実」

仁「もう一つ・・・??」


妃奈鹿「彼等も本当に信じているかはわからないわ
私達は・・・・・」



この世界の住人ではないこと



「それはどういうことだ」


妃奈鹿「っ!?・・・・柳君、どうして」

柳「仁王を練習に連れ戻せと」


妃奈鹿「そっか・・・・・
聞かれちゃったものは、仕方・・・ないよね??」




 
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