※動物が人間になります




学校が終わり、家に帰る俺ことみょうじなまえ
今日は俺が入部しているサッカー部で〔今年の目標〕を考えていたのだが……
何故か目標とは全く違う方向にどんどん話が持っていかれ、結局夜遅くまで残ることになったのだ
早く決めて家に帰りたかったんだがな…


〜家〜
ガチャッ


「ただいまー」


俺の声が聞こえたか否や、トトトトッと足音がリビングから聞こえてきた
足音は徐々に大きくなり…


ボフッ


何かが足に当たり、摺り寄せてきた


「ハハッ、ただいま…フェイ」


そこにいたのは見た事の無い珍しい、黄緑より少し濃い色の兎がいた
名前はフェイ
フェイは俺が中学に入ったばかりの時に拾った兎だ
最初は怖がられていたが、すぐに懐いてくれた
両親はアメリカでお仕事をしてて、一人だったから飼うことにした
もちろん、両親にも理由を説明してお願いをした。そしたら、二人とも動物好きだったのですぐに了承してくれた
今思うと、二人が動物好きだった事に感謝している
頭を撫でると、目を細めてすり寄ってくる。もう可愛くて仕方がない!!
とりあえず、少しフェイと俺の出会いを語ろうか…



〜雷門中に入学してまだ数日の頃…〜


ザァ――――ッ


「何でよりによって雨降るんだよ!!傘持ってきてねーし……よし、走ろう!!」


その日は何故か朝は晴れていたのに、昼から天気が崩れ雨が降った
俺は晴れていたので傘を持ってきておらず、考えた末…走って家に帰る事にした


バシャバシャッ


正直、俺は雨が嫌いだ。湿気が凄くてジメジメする…
それに、雨だと靴が濡れて中まで雨水が入ってくるから、靴下が濡れて気持ち悪い
あと、空が泣いているみたいで悲しい気持ちにもなるから嫌いなんだ…


ガサガサッ


走っていると、電柱近くに小さなダンボールを見つけた。その中から、奇妙な音がした


「何か怖いんですけど……もしかして、捨て犬か捨て猫が入ってるとか!?」


俺はそう思い、ダンボールの中を覗いた。すると……


「……これ、兎…だよな;;」


ダンボールの中には、奇妙な色をした兎が入っていた
俺はこれが本当に兎か分からなかったが…


「クシュンッ!!((カタカタッ」
「!!雨だから寒いのか…どうしよう。家に持って帰って暖かくしてやらないといけないけど、これは兎か分からないんだよな…」


そう思考を巡らせている間に、この兎(?)が死んでしまうのではないかと不安になり、結局家に持って帰った


「すぐ暖かくしてやるからな。怖いだろうけど、我慢してくれよ」


タタタタッ


俺はその時、体も靴の中も雨水でグショグショになっていたが、気にしなかった。いや、気にする事が出来なかったんだ
コイツを助けたいと必死に思っていたから…


〜家〜
俺はすぐ家の中に入り、洗い立てのタオルをこの兎に包んだ
それでも寒そうだったので、お湯につけたタオルで体を拭いた


「そういえば、コイツまだ何も食ってないはずだよな…」


俺はそう思い、温かいミルクを作った。すると…


モゾッ


「あっ!気が付いたんだな!!!良かった…」


俺はコイツが目を覚ましてくれて嬉しかったが、当の本人は俺を怖がっていた
たぶん、前の飼い主に何か怖いことでもされたんだろう…


「大丈夫、俺は何もしないから…な?」


そう言い、手を差し伸べたが…


ガブッ


「イテッ!!わぁ、血が出てきた;;まあ、俺を怖がって反撃するのは当たり前か……兎は臆病だって聞くし…でも、コイツは臆病じゃないか」


そしてまた俺はコイツに手を差し伸べた


「おいで、お腹空いてるだろ?ミルク、作ったんだ。絶対気に入るからさ…俺は何もしない。君を助けたいだけだよ((微笑」


そう言うと…


テテテテッ


兎が俺に近づいて来てくれた。そして…


ペロッ


「!!…指、舐めてくれた……ハハッ!!可愛いな、コイツ((ニコッ」


俺はこの兎が気に入ってしまった
それからと言うと…
ダンボールに捨てられていたので、俺が飼う事にした
またあのダンボールに戻すなんて可哀想だろ?


「そうだ!名前を考えないとな……うーん…月、ルーン…いや、違うだろ;;そうだな〜……!フェイ!!!」


そう呼ぶと、兎は振り返った。フェイという名前を気に入ってくれたみたいだ


「よし、今日からお前はフェイだ!!俺はみょうじなまえ。宜しくな、フェイ!!!((ギュウッ」


それから、俺たちの生活は始まったのだ……
〜入学して数日の頃の話…終わり〜



まあ、こんな感じかな?分かってくれたか分からないけど;;


「フェイ、遅くなってごめんな?部活の目標決めだったんだが…話が逸れまくって時間が掛かった;;今日は、遅れたお詫びに一緒に寝ような?」


そう言うと、フェイは嬉しそうに笑ってくれた



〜フェイside〜

僕はなまえに拾われる数日前、飼い主に飼われていた
だけど気持ち悪いと前の飼い主に言われ、ダンボールの中に入れられ捨てられた…
その日は朝は晴れていたのに、急に雨が降り出して寒くなった


寒い…お腹すいた…誰か助けて…


そう思いながらダンボールの壁を削っていると、一人の少年の声が聞こえた


「何か怖いんですけど…もしかして、捨て犬か捨て猫が入っているとか!?」


僕、犬でも猫でもないんだけどな…どちらでも無かったら僕を見捨てるんだよな…
クシャミをしながらそう思っていると…
急に体の重力がなくなり、代わりに何か暖かいものに包まれた


「すぐ暖かくしてやるからな。怖いだろうけど、我慢してくれよ」


そう言われ、たぶん家に連れていかれた
その人の体は雨に濡れているのに、とても暖かくて…僕は眠りに入った


目が覚めるとそこは、その人の家で綺麗なタオルが僕の体に包んであった


「あっ!気づいたんだな、良かった…」


僕はその人が前の飼い主とは違うと分かっていた。でも怖かった
だから、その人が差し出した指を噛んだんだ
ぶたれる、そう思ったけどその人は僕をぶたずに何かブツブツ言っていた


「まあ、俺を怖がって反撃するのは当たり前か…兎は臆病だって言うし…でも、コイツは臆病じゃないか」


臆病じゃない?この人にはそう見えるんだ…何だか嬉しくなった
その人がとても優しい笑顔で俺に話かけてくれたから、この人なら良いかなって思って、差し出された指を舐めた。そしたら、その人はさっきよりも綺麗な笑顔で


「!!…指…舐めてくれた…ハハッ!!可愛いな、コイツ((ニコッ」


この笑顔を見た時から僕は、この人を好きになったんだ
それからこの人は僕をあのダンボールには戻さなかった


それどころか親に頼んで、僕を家で飼っていいか頼んでいた


「そうだ!名前を考えないとな……」


そう言って、ご主人は唸りながらも僕の名前を考えてくれた


「フェイ!!!」


僕は反射でご主人の方を向いた。それに、フェイという名前が気に入ったからだ


「よし、今日からお前はフェイだ!!俺はみょうじなまえ。宜しくな、フェイ!!!((ギュウッ」


みょうじなまえか…君も良い良い名前だね!!こちらこそ宜しくね、なまえ!!
〜フェイside終わり〜



―次の日―
「ん〜……もう、朝か…」


俺はいつもの時間に目が覚め、起き上がった。でも、フェイの姿は何処にもなくて…


「フェイ?何処行った――?…自分で下に降りたのかな?」


そう思ったが、お腹に何やら違和感があり毛布を剥がすと…


「なまえ、おはよう!!!」
「…………誰、ですか;;」


そこには服を身に纏っていない少年がお腹に抱き着いていた
髪の色がフェイと同じ毛の色と同じだったが、気にしなかった…


「何言ってるの、なまえ?僕だよ、フェイだよ!!」
「………えぇ―――――――っ!?フェイ!?あり得ない、兎だったんだぞ!?」
「僕もビックリしたよ!!目が覚めたら、人間になってたんだもん!!」
「とっ、とりあえず何か服着てくれよ!!!」
「はーい♪」


俺はもう何が何だか分からなくなっていた
動物が人間になる訳ない…だが、この少年は自分をフェイだと言っている


「あー、もう!!訳が分かんねーよ――――!!!!!」
「なまえ、僕の事嫌いになった?((ウルウル」
「うっ///!!!」


可愛すぎる///…もう、覚悟を決めるしかないな


「本当にフェイ、なんだよな?」
「そうだよ、なまえ!!」
「……分かった、君を信じよう」
「!!信じてくれてありがとう、なまえ!!((ギュウッ」


甘えん坊な性格は、フェイとそっくり…本当にこの子はフェイなんだな…
俺はこの子を見ていると微笑ましくなった


「……あ、学校;;」
「学校?…あ、なまえがいつも行ってる所だね?僕も行きたい!!」
「それは無理じゃ…手続きとかもしてないし…」
「大丈夫!!見学なら手続きとかしなくて良いんでしょ?」
「まあ……俺もフェイをこの家に1人置いてくのは何か怖くて嫌だし…」
「じゃあ、決まり!!早く行こう、なまえ!!」


フェイが人間になっている今は…少しの我儘も聞いてやらないとな


「急がなくてもまだ間に合うぞ((クスクスッ」



〜学校〜
「ここがなまえの通っている学校か〜((キラキラ」


フェイが眩しいくらい目を輝かせて学校を見ている
この学校、金掛けすぎだもんな…;;


「おはよう、なまえ!!……あれ、その子は?」
「ああ、はよー…天馬」


今、挨拶をしてきたのは松風天馬。同じクラスで同じサッカー部所属
明るくて、ウザったいくらい懐いてくる;;


「なまえ、その子…誰?((ギュウッ」


フェイは眉間にしわを寄せながら、腕に絡みついてきた
初めての人だから警戒してるのか…


「フェイ、コイツは松風天馬。俺と同じクラスでサッカー部の奴。天馬、こっちはフェイ。俺の―……(何だ;;?」
「初めまして、僕はフェイ。なまえの恋人だよ♪((ニコッ」
「(フェイ――――!?何言ってんだよ!!」
「恋人……でもまだ知り合ったばかりなんでしょ?絶対なまえを俺のものにするから覚悟しておいてよ★」
「(天馬も何言ってんだ――――――――!?」
「覚えておいてあげるよ★」


バチバチバチバチッ


二人の間で火花が散っていた……


「と、とりあえずサッカー棟に行くぞ!!朝練に遅れる;;」
「「うん!!/はーい♪」」


あまり問題を起こさなければ良いんだが……;;



〜天馬side〜
少し早めに来て正解だったかも!!
だって、大好きななまえに朝一番に会えたんだよ!!もう嬉しいよ♪
あれ?隣の子、見ない子だな…誰だろ?なまえの知り合いかな?


「初めまして、僕はフェイ。なまえの恋人だよ♪((ニコッ」


   こ・い・び・と???


そんなはずない。だってなまえはまだ好きな人もいないんだよ?
好きな人もいないのに、恋人が出来るはずがない…
俺、気持ちも伝えてないのに……こんなのってないよ!!!
なら、フェイからなまえを奪えば良いんだ♪


「でもまだ知り合ったばかりなんでしょ?絶対なまえを俺のものにするから覚悟しておいてよ★」


いわゆる宣戦布告っていう奴だね!!
フェイより俺のほうがなまえと過ごした時間は長い…必ず俺のものにするからね、なまえ!!!
〜天馬side終わり〜



〜サッカー棟〜
ウィンッ


「おはようございます、神童キャプテン…」
「!!ああ、おはようなまえ……って、何かやつれてないか;;?」
「色々ありまして…気にしないでください!!」


俺にあいさつした先輩の名前は、神童拓人先輩。俺が入部しているサッカー部のキャプテンだ。
成績優秀、スポーツ万能。おまけに女子にモテモテのイケメンさんなんだ!!
あ、そういう趣味とかは無いから大丈夫だb


「フェイ、そろそろなまえから離れてよ。凄く迷惑してるよ」
「天馬こそ離れたら?困ってるよ」
「2人とも、お願いだから喧嘩しないでくれよ――;;」
「「なまえがそういうなら!!!!」」
「大丈夫か、なまえ?((撫で撫で」
「キャプテン、ありがとうございます((微笑」


キャプテンに撫でられると笑顔になるんだよな〜〜♪何か癒される


「なまえ、僕みんなの事知らないから教えてよ!!」
「ああ、そうだったな((ポンッ」


俺はフェイに皆を紹介した


「僕はフェイ、天馬には言ったけどなまえの恋人です♪」
「「へぇ―……恋人ぉぉぉ―――――――!!!!!!??????」」
「違いますから叫ばないで下さい;;」
「こ、恋人ならその……き、キスとかしたのか///?」


神童キャプテン何言ってるんですか―――!?


「うん、したよ。というか、してるよ!たーっくさんね♪((ニコッ」
「…したっけ?」
「ほら!行ってきますのチューとか、ただいまのチューとか!!あ、ただいまの時はあまりしないか……あと僕が苦手な食べ物頑張って食べたら、ご褒美にチューくれるんだよ!!!」
「あー……そう言われればそうかもしれないな…」


でもキスしたのは兎の時のフェイだったから問題はないだろ!←


「駄目!なまえ、そういうのは本当に好きになった人にしかしたら駄目だよ!!!」


天馬がやたらと必死に言ってきた。どうしたんだ?


「あ、ああ…分かった。分かったから顔が近い!つか近すぎ!!」
「!!あ、ごめんね?((ウルウル」


何だか、子犬に見えてしまう…撫でたいな……
ハッ!俺は一体何を考えているんだよ!!!


「……………」


この時俺は、フェイに睨まれていたなんて知らなかった
フェイだけじゃない…神童キャプテンにも、嫉妬のような目で見られていたなんて……






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