キミに出逢って変わる心








僕は何にも縛られたくない
それは、相手に対しても
同じなのだろうか?








宇宙科の教室で翼と昼食をとっていたら、教室に姫先輩が来た。僕らは宇宙食がお昼御飯だから、特別食堂や購買部に行かなければならない理由もない。だから、予定がなにもない場合は教室で翼と食事をとる。
そこに突然現れた姫先輩に教室がざわめくのが分かった。無理もない、彼女は月子先輩同様にこの学園の貴重な女生徒なのだから。

「姫なのだ〜!珍しいな、一緒にご飯食べるのか〜?」

翼はもう一緒に食べる気満々みたいで、姫先輩の傍に行って此方に誘導してきている。

「ぁ、お昼はもう食べたの。今日は授業が早く終わったから」

手ぶらで来ていたからもしかしたらそうなのかな?と思っていたら案の定。少し残念がる翼を宥めながら、僕は先輩がここに来た理由を訊ねたら。

「それで、どうしたんですか?」
「えっとね、梓くんに用事が…」

「姫先輩っ!」

その時、姫先輩の背後から大きな声で先輩を呼ぶ声が聞こえた。誰かと思えば宇宙科のクラスメイト。いきなり下の名前で呼ぶなんて馴れ馴れしいやつ。そう思ったがもちろん口には出さない。

「ん?…どちら、さま?」
「木之瀬と天羽のクラスメイトです!先輩と一度お話してみたいと思っていて…」
「ぁ、俺もです!」
「先輩、よかったら俺たちとも仲良くしてくれませんか!?」

姫先輩の周りに一気にクラスメイトが押し寄せる。姫先輩はびっくりしながらもそれに応じていた。…なんだろう、心になにか引っ掛かりが。

「姫、モテモテなのだ」
「余計なこと言ってないで、ほら、ご飯食べちゃいなよ」
「ぬぬ〜、梓は姫の彼氏なのにヤキモチ妬いたりしないのか?」

…ヤキモチ、馬鹿馬鹿しい。僕は確かに姫先輩を手に入れたい、そう思って交際を始めたけど、元々執着心のない僕にヤキモチなんてモノは無縁だった。

「先輩は魅力的だからね。いちいち妬いてたら彼氏は務まらないよ」

宇宙食をかじりながら、チラリと姫先輩を横目で見た。最初は戸惑っていたみたいだったけど、今は宇宙科のクラスメイトに溶け込んで楽しそうに話している。
姫先輩の笑顔は好きだ。でも、先程からこの心に黒い絵の具が広がっていく感覚はなんだろう。姫先輩の笑顔は、決して黒く染める何かなどないはずなのに。
その時、クラスメイトの一人が姫先輩に触れたのが見えた。触れたと言っても軽いスキンシップ程度だったのだけど、それを見た僕の体は勝手に動き出していた。

「姫先輩?僕に話があったんですよね?昼食が終わったので場所を移しましょうか」

有無を言わさず姫先輩の手を取り教室のドアへと歩を進める。すると後ろから批難の声が上がった。それをさらりと流して、姫先輩をぎゅっと抱きしめながら、僕はクラスメイトに向かって言い放った。




「姫先輩は僕の彼女だから、必要以上にベタベタする奴等の傍には置いておきたくないんだよね」


硬直するクラスメイトと姫先輩、でも一番驚いたのは、先輩に対してこうも強い執着心が生まれていることに気付いた僕自身だった。


-----------------------------
アリス様リクエストの『先輩夢主で嫉妬したり束縛したりする梓』でした。
あまりしなさそうですよね、彼は。
嫉妬するなら、此方に振り向いて貰えるような魅力で迫ればいいんでしょ?みたいな…
どこまでもポジティブな男の子のイメージです…*
リクエストありがとうございました!

20120314









人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -