舞い散る桜のように







どうにでもなってしまえ
そんな気分だった






桜が妙に目に付いて、私はそれがなんだか嫌で、俯いて膝を抱えて踞っていた。今日は目に入れたくない、何となくそんな気分だった。
自分でもどうしてこんな気持ちになるのか分からなくて、私は行き場を見失ってしまった仔猫のように、その場でじっと宛のない想いを馳せる。あぁ…私はどうして…

「おやぁ〜?こんなところに迷子の仔猫ちゃんはっけーん!」

頭上から人の声がしてびっくりして顔を上げると、目の前が紅でいっぱいだった。私は思わず目を見開いて、暫くしてこれは声の持ち主の髪なのだと気付かされる。

「どうしたの?こんなところで一人で。黄昏て花見してる感じでもないし」
「…自分でも、よく分からないんです」

この感情がなんなのか分からなくてそう呟けば、その人はくひひと笑って私の隣に腰を下ろした。どうやら立ち去る気はないようだ。

「桜を前にして行き先を見失っちゃったのかな〜?それとも、心が何処かで迷子になっているから動けない…とか」
「わ、笑わないんですか?」

隣であれこれと私の心の中を詮索するようにする紅い髪の人。びっくりして尋ねれば、その人は至極当然のように口を開いた。

「ん〜?どして?仔猫ちゃんはこんなところで動けなくなっちゃうくらい、今何かを抱えてるんでしょ?俺はそれを笑うほど下衆な男じゃないよ」

そういうとその人はクイっとゴーグルを上にあげて、ニヤリと微笑んだ。その笑顔になんだかほっとしてしまう自分が不思議で、初対面なのにもっとこの人の事を知りたい…そう思わせてしまうような目をしていた。

「で、仔猫ちゃんの名前は?」
「姫です」
「姫ちゃん、うん…良い名前だね。俺は白銀桜士郎」

よろしくねと差し出された手は男の人の物で、握り返した私の手は僅かに震えていた。
気が付けば、先程まで動けなかった心はもうなくて、代わりに目の前の彼を感じて、ゆっくりと鼓動を速める心がそこにあった。








(私の前に現れた貴方
桜の名を持つ、少し変わった貴方)

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勢いで桜士郎さん…っ!
フォロワさんに桜士郎好きさんが多いので練習がてら書いてみました〜!

20120408





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