ホワイトデーのお返し〜宮地龍之介の場合〜
*宮地龍之介の場合*
「宮地くん、今帰り?」
放課後、寮に向かう宮地くんの姿を見つけた。部活動はお休みだったみたいで、彼は声を掛けた私の姿を見つけると、ハッとした顔でこちらに近付いてきた。
「よかった…今日はもう逢えないかと思っていた」 「?…私の事を探してたの?」
宮地くんが私に用事なんて珍しいな、そんな考えが脳裏をよぎる。いつも声を掛けるのは私だったから、宮地くんが私を探していたなんてびっくりだ。
「あぁ、選択授業で逢えるかと思ったんだが」 「ぁ、今日サボっちゃった」 「お前な…、まぁいい。これを渡したくてな」
意外にもサボったことにはあまり触れてこなかった。てっきりお小言を言われるかと思ったのに。 宮地くんは私に紙袋に入った何かを差し出した…なんだろう。
「クリーム系の…なにか?」 「いや、クリームはいつ渡せるか分からないから候補から外したんだ」
本当はクリームを渡したかったが…という宮地くんは相変わらずだ。でも彼の薦めるクリームは本当に美味しいから、私はいつも体重計に乗るのにヒヤヒヤしてしまう。 それはいいとして、宮地くんから受け取った紙袋を覗くとアップルパイが入っていた。
「わぁ…美味しそう」
綺麗な網目で見目からしてサクサクした食感が想像できた。でも、なんでアップルパイ?
「意外なんだがアップルパイにクリームを乗せると、アップルパイの食感とクリームが絶妙に合うんだ。だから是非お前にも試して欲しくてな」 「は…はぁ…」
いつになく饒舌になる宮地くんと苦笑する私。宮地くんはクリームの事になるととっても楽しそうだ。
「ぁ、じゃあ後で一緒に食べない?宮地くんおすすめの食べ方を教えて欲しいな」
私の言葉に、彼は大きく頷いた。
(好きなモノを語る貴方は楽しそう、見ている私も笑顔になるくらいに)
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