ホワイトデーのお返し〜東月錫也の場合〜

*東月錫也の場合*




「はい、バレンタインのお返し」

お昼ご飯を食べ終わって、片付けをしていたら錫也からプレゼントを差し出された。

「そっか…ホワイトデー!」
「うん、お前にはバレンタインにチョコレートを貰ったから」

そのお返し、とはにかむ錫也。相変わらず笑顔がよく似合うなぁと思いながら、プレゼントの包装を取り去る。お菓子かな、ケーキかな…と期待していたら、中から出てきたものはそのどちらでもなかった。

「錫也…これって…」
「驚いた?」
「びっくりしたよ〜!錫也の事だから食べ物だと思ったのに!」
「はは、さっき弁当食べたばっかりだろ?」

いや…そういう意味ではないんだけど。あえて突っ込まずにまじまじとプレゼントされたそれを見る。

「買うの大変だったんじゃない?」
「んー、まぁ…それより、つけてみてくれないか?」

やっぱり大変だったんだ…と思いながら、指示通りつけてみると、錫也はうんうんと大きく頷いた。

「俺が思った通り、お前に似合うよ」
「本当?私も欲しいものだったから、錫也に選んでもらえて嬉しい!」

錫也がくれたもの、それは髪を結うためのシュシュだった。依然料理をするときに髪が邪魔になるからとゴムで結んでいたら、髪に跡がついて悄気ていたのを見ていたらしい。

「ありがとう、錫也っ!大切にするね」

私を見つめる彼の優しい笑顔が眩しかった。






(お料理だけではないのです、私の事をいつも気にかけてくれる優しい人)




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