ホワイトデーのお返し〜土萌羊の場合〜
*土萌羊の場合*
「はい、これキミに」
羊くんから可愛らしいラッピングを渡された。…なんだろう?
その考えが顔に出ていたのか、羊くんはその綺麗な顔に似合う優しい笑顔で私にお返しだよ、と呟いた。
「バレンタインにキミから貰ったでしょ?」
「あ、うん…そういえば」
「だからお返し。僕の好きなタルトタタン!」
キミにも是非食べて欲しくって、と言う羊くん。確かに甘い香りが受け取った包みから溢れ出してくる気がする。
「ありがとう、大切に食べるね」
そう告げれば、羊くんはコクりと頷いてこちらをじっと見た。
「…なぁに?」
「美味しそうな匂いがして…僕お腹すいちゃった」
「ふふ、じゃあ半分こしよ?」
「ほんとに?でもそれはキミに上げたものなのに…」
しゅんとして羊くん自慢のアホ毛も垂れ下がってしまっている。えーっと…こう言うときは…
「よ、羊くんと一緒に食べたらもっと美味しくなると思うから…ね?」
「…キミはほんとに優しいね。じゃあ僕が取っておきの食べ方を教えてあげる」
そういって羊くんは、満面の笑みで私を射抜いた。
(私にとっては、その笑顔が一番のお返しです)