叶わない恋なんてロマンチックな言葉は似合わない。 これは馬鹿がする馬鹿な恋。
「はぁ…」
姫が不知火先輩に好意を寄せていて、不知火先輩は俺の気持ちを知っていて。 身動きのとれない恋にただため息が漏れた。
「哉太最近元気ないよね、どうしたの?」 「なんでもねぇよ、寝癖ついてる」 「ぇ…うそっ!」 「嘘」
ばかばかと頭を叩かれながら、この向かう先の分からない恋に思いを馳せる。誰かのことをこんなに深く考えるなんて思っても見なかった。
「哉太はさ、好きな人いないの?」 「…は?」
突然姫に尋ねられて硬直する身体。好きなやつにこんな質問をされるなんて…
「いないの?」 「なんでそんな事聞くんだよ」
お前は不知火先輩が好きなんだろ?あぁ、恋愛相談に乗って欲しいとか?だったらパスだ。俺はそう言うのには向いてねぇ。錫也か月子辺りにでも相談してくれ。 もちろんそんな事は言えないけど。
「哉太でも恋するのかなって思って…」 「お前失礼なやつだな…」 「ね、いるの?」
ぐいっと詰め寄られて逃げ場を無くされる。俺はため息をつきながら『いちゃ悪いか?』と口にした。
「いる、んだ…」 「なんだよ、お前が聞いたんだろ?」 「まぁそうなんだけど…」
何故か言葉を濁す姫。
「なんかあんのか?」 「ぁ、ううん!ただね、哉太の事を好きな子が居てさ…」
その後は聞かなくても分かった。つまり姫が縁持ちしようって話だろ? と同時に、俺の失恋が確定した。分かっていたけれど、本人にこんな形で告げられることになるとは…
「…俺、次サボるわ」 「ぇ…あ、哉太っ!」
姫が呼び止める声が嫌に耳に響いたけれど、俺は黙って教室を出た。
(叶わない恋なんて ロマンチックな言葉は似合わない。 これは馬鹿がする馬鹿な恋。)
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