この歳になって初恋なんて、本当に馬鹿げている
「ぁ…あの!私本当に大丈夫なのでっ」
入学式のあの日、お決まりのように桜並木の真ん中で上級生に絡まれる姫を見つけた。 見過ごすことも出来たのだろうけど、今にも泣き出しそうな姫を見て、つい動いてしまった俺の身体。 気が付けば何発かの殴りあいになっていたのだが、長引くと面倒だと思ったのか上級生がそそくさと逃げていった。3分以内でよかった…
「ごめんなさい!私のせいで…」
駆け寄りながらそう告げる彼女に、俺はヒラヒラと手を振って気にするなと答えた。
「お前のほうこそ大丈夫か?」 「ぁ、はい!貴方が守ってくれましたから」
ありがとうございました、と共に見せる笑顔。その表情が本当に綺麗で、俺は思わず見惚れた。
「敬語じゃなくていいぞ、俺1年だし」 「え!私も1年なんです!学科は天文で…」
驚いた、まさか入学式にクラスメイトを助けることになるとは。
「俺も天文科だ。なんだよクラスメイトか」 「凄い偶然…。私、花野姫って言いますっ」 「七海哉太だ。哉太でいい」 「哉太…」
じゃあ私の事は姫ね?なんて尋ねる彼女が可愛くて。その表情に魅せられて、俺はもうこの時既に恋に落ちていたんだということを後に知ることになる。
(この歳になって初恋なんて、 本当に馬鹿げている。 分かっている。)
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