この恋を止められない







いつから僕はこんなに
臆病になったんだろう?






なんだか最近調子が出ない。なのに、生徒会の仕事は恐ろしいほど順調に進んでいて。颯斗にも『会長もやれば出来るんですね』なんて言われる始末。なのに、何故か煮え切らない。それは多分…

「姫が居ない…からだろうな」

ここ何日かろくに会話を交わしていない。教室で逢えるはずなのに、授業以外で姫を見かける事はほとんど無くて。気付けば生徒会室でぼんやりと外を眺める毎日。
いつからだろう、姫が帰りに生徒会室に寄らなくなったのは。誰も居なくなった部屋を見回して、ため息をついてから帰る支度をする。鍵を掛けて歩を進めようとしたら、暗がりに姫を見つけた。声をかけようとした手が宙を切る。

「っあ、あの!ホントにいいから!」
「そんな事言わないでさ、寮まで一人なんて寂しいでしょ?俺が一緒に帰ってあげるよ」

絡まれていた、思いっきり。男の方は…西洋占星術科のやつだったか、馴れ馴れしく肩なんて抱きながら姫に声を掛けていた。

「っ、やめて…」
「ん?何か言った?」

俺にははっきり聞こえた消え入りそうな姫の声。俯き、瞳をギュッと閉じて耐える姿に止まっていた身体が動き出した。

「こらこら、なーにやってんだ?」
「一樹っ」
「不知火!」
「下校時間過ぎてるぞ。ほら、早く帰れ」

生徒会長命令だ、と言えば、姫とのやりとりを見られていたからか、罰の悪そうに立ち去る彼の姿を見送って姫に向き直った。姫は瞳にうっすら涙を浮かべていて今にも泣き出しそうにしている。

「ったく…、大丈夫か?」
「っかず…!」

ぎゅっと俺に抱きついてくる姫。こうして触れ合うのは何日ぶりだろう。久しぶりの姫の感触。抱きしめ返さない理由もないので思いっきり抱きしめた。

「こんな時間まで、何してたんだ?」
「一樹の事待ってたの。そしたら…」

さっきの事を思い出してか、姫が身体を強張らせたので、抱きしめるのをやめて頭を撫でてやった。姫が上目遣いでこちらを見つめてくるので視線がぶつかる。そのまま触れるだけのキスをした。

「最近全然一緒に居られなかったでしょ?」
「あぁ、嫌われたと思ってた」

そう言うと目を丸くしてブンブンと首を振る姫。どうやら愛想を尽かされたわけではなさそうだ。

「そんなわけない!私が嫌いになるなんてあり得ないよ」
「嬉しいこと言ってくれるな。でも、不安だった」

嫌われるのが怖くて、別れを告げられるのが嫌で、姫に声を掛けられなかった。俺はいつからこんなに弱くなったのだろう。姫を失うことがなによりも怖い、そう感じたらそこから距離を詰められなくなる。

「ごめん。…やりたいこと探してた」
「やりたいこと?」
「一樹はもう大学も決まってるし、漠然と夢があるでしょ?でも私には何もなくて…、だから、私がやりたいことって何かなって探してたの」

唖然とした。姫がそんな風に考えているなんて。いつも隣で俺のやりたい事を応援してくれている姫が悩んでいるなんて、気に掛けたこともなかった。自分の決意やら夢が彼女を焦らせてしまっていたのなら、本当に申し訳ない。

「ごめん…俺、お前の事全然分かってなかった」
「ううん。一樹のおかげで自分の将来と向き合おうって思えたんだよ?」

姫はにっこり微笑みながら俺の手を握った。その手があまりにも温かくて、握り返したら俺の体温で姫の手が冷えてしまうか心配になる。

「俺の、おかげ?」
「一樹と一緒に歩いて行きたいから…、全てを委ねてしまうのは違うでしょ?」

俺はそれでも構わないのに。姫は何もせずに傍に居てくれればそれでいい。そう思ってしまう俺は異常なんだろうか?でも本当に、姫が居てくれさえすれば満たされる。

「だから、一樹の隣にいても恥ずかしくないように、色々考えてた」
「お前ってやつは…」

どこまで俺を夢中にさせるのだろう。今まで離れていた時間を埋めるように、俺は姫を抱きしめた。愛しい、好きだ、その気持ちが溢れて止まらない。

「今日は離さない。ここ何日か姫が傍に居なくて、俺はもう限界だ」

顔を赤くする姫に、本日二度目のキスを贈った。













(例え止め方を教わっても
僕がキミを好きな限り
この熱は冷めることはない)

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こういう、同じ時期に卒業するに当たってヒロインが、自分の未来を考えるのが書きたいんです。
だって一樹さん進路決めたら迷いなく進むんじゃうんですもん…泣

20120228




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