終わりの日まで愛して






「姫…こっち来て、」

四季くんに名前を呼ばれて見てみると、手招きしてこっちを見つめていた。ベッドの上で。
不審に思いながらもそっとベッドに腰かければぎゅっと抱きしめられる。その抱きしめ方がなんだか少し焦っているような、そんな感じがして、私は慌てて四季くんを抱きしめ返す。

「……」

言葉はない。ただ抱きしめられる時間が少し強くなった気がする。四季くんは口数が多いわけじゃないから、こういう態度で示す行動は凄く大事。こんな時じゃないと彼とはなかなか向き合えないから。

「…ごめん、もう、大丈夫」

ぽつりと呟いて四季くんがゆっくりと私から身体を離した。頬に手を当てられる。少しひんやりとした手が、暖かい室内で火照った頬に気持ちが良い。その手にそっと自分の手を重ねて瞳を閉じる。

「なにか、見えたんだね」

心が詠めるわけではないのだけれど、何となく…恋人の勘ってやつ。
それは当たっていたようで、四季くんはゆっくりと私にキスをしてきた。慈しむような、濃厚ではない柔らかいキス。これは四季くんが逃げる時の行動。

「嫌なことだったの?」
「姫…意地悪、」
「四季くんの事ならなんでも知りたいって思うよ?」

知りたいの、貴方の事。嫌な気持ちにもなるかもしれない、しつこく聞いて嫌われちゃうかもしれない。だけど、私から抉じ開けなきゃ四季くんとの距離はいつまでも埋められない気がして、多分少し焦ってる。付き合って暫くたつけど、未だに彼の心を垣間見れなくて…なんだか苦しい。
四季くんは、ふぅっと小さくため息をついて、私の目をじっと見て口を開いた。

「大きな転機が来る」
「四季くんに?」
「俺たちに」

良い転機ではないのだろうとは、彼の先程の言動から何となくわかった。四季くんには見える未来。私には見えない未来。見えるから辛くて、見えないから気付かない間に起こってしまう…そんな未来。

「大丈夫だよ、私たちなら…大丈夫」
「姫を離したくない、離れたくない」
「四季くんにその気持ちがあるなら、私たちはずっと一緒だよ」

私も同じ気持ちだもん、とふんわりと微笑むと、それを見てか四季くんも微笑んでくれた。
四季くんは私をそっとベッドに押し倒して、上からぎゅっと抱きしめた。

「姫と…このまま混ざってしまえば、いいのに」

首筋に顔を擦り付けて甘えながら、四季くんはぽつりと呟いた。











(お願い、この未来を裏切って。
僕はそんな都合の良い戯言を呟く)

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あとりんへ。
四季くんがまだよくわからないの。
私の感じ方がこんな感じ…
見え方というか…見えるのは一樹より見えるのかな〜。

お題提供:確かに恋だった
20120225




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