キミを好きな理由
朝からそわそわしているのに… キミの一番はボクじゃないの?
「はい、翼くん!どうぞ」
綺麗にラッピングされた小さな箱を姫から受け取る。姫からのチョコレートは本当に嬉しいのに、心から喜びきれていない自分がいて、ちょっと嫌だった。
「ぬ、サンキューなのだ!」
それでも、姫にそれを悟られたくなくて、いつものようにリアクション、したつもりだったのだが気付かれてしまった。
「何かあったの…?」 「どうしてそう思うんだ?」 「翼くん嘘つくと哀しそうな顔するから…」
あぁ、自分をこんなに見てくれているのはなんて幸福なことだろう。嘘を見抜かれてしまうのは少々困るのだけれど、好きとか愛してるって言葉なんかよりも、俺のことを見てくれてるのを実感する方が、何倍も何倍も嬉しい。
「違ったらごめんね?でも」 「違わない。ちょっと、怒ってる」
と言うよりは拗ねているのかもしれない。姫は瞳を大きく開いて驚いている。くるくる変わる彼女の顔は面白い。
「私、なにかした?」 「覚えある?」 「…思い当たらない、ごめんなさい」
本当に申し訳なさそうにいわれて、こちらが申し訳なくなってきた。姫からすればきっと些細なこと、でも俺には大切なこと。
「ぬいぬいとそらそらにも、あげたんだろ?」 「ぁ、うん。お世話になってるし」
渡さないと煩そうだよね、特に一樹会長は、と苦笑混じりに言われたけれど、一緒に笑ってあげる気持ちにはならない。代わりに姫をぎゅっと抱きしめる。
「つ、翼くん!?」 「梓にも、クラスの幼馴染みにも…みんなに配った。姫は俺の彼女なのに、なんか嫌だ」
醜い嫉妬。姫は悪気があってしたんじゃないと思う。日頃の感謝を込めて、皆にチョコレートを振る舞ったのだと。しかし頭では分かっていても、納得できない自分がいた。
「ごめん、姫を困らせてしまっているのだ。でも、モヤモヤしたまま姫から受け取るのは嫌だから、言ってみた」 「翼くん、」
落ち着いた姫の声。呆れられてしまったのだろうか。ため息混じりのそれに、急に不安が押し寄せてくる。
「包み、あけてみて?」 「ぬ?」
言われるがままに包みを開くと、手作りだろうか、少し不格好なチョコレートが姿を表した。首を傾げて、手作り?と聞こうとしたら唇を塞がれた。姫からのぎこちないキス。軽く唇に触れてすぐ離れたそれは、離れてから熱を放つ。
「翼くんのは特別なの。みんなのはお店のなんだけど、翼くんのは手作りしたらチョコレートがなかなか固まらなくて…」
遅くなっちゃった…と姫。びっくりして言葉を失う俺に姫は、味は大丈夫っ!見目はいまいちだけど、と少し的はずれな答えを返した。
「姫…」 「他の人と翼くんは一緒じゃないよ。本当は一番に渡したかったんだけど…」
遅くなってごめんね、何て言うものだから思いっきり抱きしめてやった。こんなに俺の事を考えてくれているのに、謝罪されたらバチが当たる。
「嫉妬してごめんちゃい…」 「ううん、誤解が解けてよかった」 「なぁ、もう一回。もう一回キスしてほしい」 「えぇ…」
少し照れながらも、姫はキスをしてくれる。それは一度目より、長く深いものだった。
キミを好きな理由
(キミが好き、その想いはストレートに君のハートへ贈るよ。 心配性で臆病だけど、誰よりもキミが大切で大好き。)
------------------------ バレンタイン企画のひなたんリク。 ナイン君から急遽変更させていただきました。 翼くんの口調…難しいorz
20120214
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