そして再び惑わされた
意識してる? それとも無意識? だったら相当たちが悪い。
やばい!やばいやばい!下校してから部屋でウトウトしてしまっていて、明日提出の課題を学校に忘れてきているのに気が付いたのは20時になる少し前。夜の学校は怖いけれど、課題を提出しないわけにはいかなくて、私は急いで学校に向かった。
「はぁ…よかったぁ」
ラッキーな事に、守衛さんにも見つからずに寮の近くまで帰ってくることが出来た。なかなかスリリングだけれど、これからは気を付けないと…。 そう考えていたら前方に人影。よく目を凝らさなくてもわかる、綺麗な紅の髪。
「羊くん…」 「…何してたの?こんな時間まで」
声音を聞く限り、かなりご立腹のご様子。近くまで行けばやはり、不機嫌そうな顔がそこにあった。
「えっとね、課題を学校に忘れたの。それを取りに…」 「はぁ…姫、今何時か分かってる?もう20時過ぎだよ?」 「う…ごめんなさい」
羊くんの言うことは最もで、帰って直ぐに課題に取りかかっていれば、こんな時間に忘れ物に気が付くこともなかったのに。 私がしゅんとしていると、羊くんは頭をくしゃりと撫でてくれた。
「本当に気を付けて?姫は女の子なんだから」 「確かに性別は女の子だけど…」
この学園で私を女扱いしてくれる人なんて、本当に一握りな気がする。だから心配しなくていいよ、と笑いながら言うと、羊くんは頭を撫でるのを止めた。
「姫、分かってない」 「え?っ、きゃあ!」
羊くんに手近にあった木に身体を押し付けられる。身動きが取れなくて、手を掴まれていて、なんだか怖い…っ! ぎゅっと目を閉じていたら、手首に込められていた力が弛んだ。
「…分かった?力を前にしたら姫はか弱い女の子。僕以外が姫にこんな事したら、僕耐えられない」 「羊くん…」
羊くんは、痛かった?ごめんね…と言いながら私の身体を労ってくれたけれど、私の心臓は鳴り止むことを知らない。羊くんがこんなに近くにいて、私に触れていてドキドキ。
「姫…どうしたの?顔が赤い…」 「な…んでもない!ちゃんと気を付ける!気を付けます!」
バッと羊くんから離れれば、不思議そうな目をしてこちらを見つめてくる。私はその目を見られなくて、慌てて視線を逸らした。
「そういえば!羊くんはどうしてここに?」 「姫が学校に行くのが窓から見えたんだ。慌てて降りてきたらこうなったってわけ」
なるほど、心配して来てくれたんだ。それは本当に申し訳ない。改めて謝ると、羊くんは分かったならいいよ、と笑いかけてくれた。その笑顔にまたドキドキさせられる。
「姫、やっぱり顔赤い。風邪引いたの?」
手を頬に添えながら、羊くんは私の顔を覗き込む。再び近くなった顔に、私の熱は更に上昇していく。
「よ、羊くん…っ!」
慌てて口を開けば、笑いを噛み殺すような吐息が聞こえてきた。それは羊くんのモノで、彼は必死に笑いを堪えながら口を開いた。
「姫は本当に可愛いね、僕の言動で赤くなってるんでしょ?」 「ち、ちがっ…」 「違う?」 「…ちがいません」
仕方無く認めれば羊くんは両頬に手を添えてきた。ひんやりとした手は気持ちよくて…じゃなく!置かれた状況に顔の熱が更に上がるのを感じた。
「僕だけ見てて、僕だけを感じて。姫を今以上に夢中にさせるから…」
そして再び惑わされた
(君は永遠の小悪魔)
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のらたんリクの羊くん! 月子挫折したごめん…
お題提供:確かに恋だった 20120209
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