夜更かししましょう
髪を、撫でる…
眠る姫の横に自分も寝転がって、そっと夢の中に堕ちる姫の顔を見た。気を抜ききった安らかな表情。 少し開いた唇からは、小さく寝息が聞こえて来て熟睡しているのが伺える。
(…人の気も知らないでこいつは…)
そう思いながらも、ため息が漏れるのは緩んだ口許。と同時に、もう少し警戒心を持ってくれないと困るなぁ…なんて思ってみたり。 けれども、変に警戒心を持たれたら、それこそこうして一緒に眠るなんて出来なくて、どちらを選んでもニュアンスは違えど苦しい状況に追い込まれるのは間違いなかった。
「ん…っ」
撫でる指に力がこもってしまったのだろうか。姫が小さく呻きを上げた。時折、頭を撫でた時に『一樹は加減がわかんないの?』と怒られるのを思い出す。愛しいと想うと指先に伝わってしまうのだと知ったのは、姫にそう叱られてからだった。
「悪い、起こしたか?」 「…………」
返事は、ない。 多少不快感を感じたのか、眉間に僅かな皺を刻みながらも覚醒には至らなかったようで、ほっと息を吐いた。
「あ、れ…寝てた?」
あれからきっかり1時間、姫が起きることはなくて、ベッドを抜け出そうとしたら姫がゆっくりと瞼を開けた。
「おはよ…っていってももう22時だから、そのまま寝てもいいんじゃないか?」 「ぁー…」
時計を見ながら、姫が残念そうな顔をしたのは多分、21時からのドラマを見逃したから。面白いので、予約して録画しておいたのは黙っておくことにする。
「…眠気がとんだか?」 「そうだね…寝転んでれば寝ちゃいそうだけど」 「そうか…じゃあ」
抜け出そうとした身体を姫の方に向け直して、未だ寝転がったままの姫の頭の横に両腕をついた。
「相手してくれよ、姫…」
見開かれた姫の瞳を確認して、俺は堪えていた熱を放出するように、早急に口付けた。
「ん…っ、かずっ」
抵抗しようとした姫の舌を絡めて、強めに吸い上げてやる。段々と不規則になる姫呼吸が、行為を急かすように手を動かせた。
「まだ…許可…してないんですけど…っ!」 「まだ、ってことは、良いってことだよな?」 「……っ!許可、しないっ!だめ!」 「もう遅ぇよ」
起き上がって逃げようとする姫を掴まえて、ベッドに深く沈み込んだ。
夜更かししましょう
(眠たくなったら寝ていいよ) (そんな余裕、作らせないけど)
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20120619
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