どういう意味ですか







「哉太ー?授業終わったよー?」

放課後、昼休みが終わって教室に戻ってからずっと眠り続けている哉太を揺すってみた。
授業中に寝ているのは珍しいことじゃないし、陽日先生の配慮もあってか教師の間でも哉太を無理矢理起こしてくる人はいない。主に身体への負荷…を気遣っているのだろうけれど、哉太はそれに気付いてるのかな。

「……ん、…終わったのか」
「もう放課後なんだけど」
「はは、みたいだな。教室に誰もいねぇ」

いや、笑い事じゃないですし!
同じ体勢で眠っていたからか、固まった筋肉を伸ばすような背伸びする彼を見て、思わず突っ込みをいれたけれど、どうやら本当に眠っていただけみたいで安心した。

「もう帰るよね?戸締まり確認しなきゃ」
「姫今日日直だったっけ」
「日直は貴方ですけど、哉太さん」

黒板を指し示せば七海の文字。あー…と小さく呟いたあと、哉太は立ち上がって窓に向かった。

「さっさと確認して帰るぞ」

なんて、さも覚えて居たかのように窓をチェックする哉太。窓からうっすら射す夕陽によって照らされた哉太の横顔を見れば、寝起きの顔はもうそこになくて、ドキッとした。普段は意識してないけど、一度意識し始めたら加速する鼓動を止められなくなる。
思わず目が離せなくて、その後ろ姿をじっと見つめれば、視線に気が付いたのか哉太が振り向いた。交わる視線にはっと息を呑む。

「どうした?」
「いや、なにも?」
「なんで疑問符なんだよ」

窓際に居た哉太がこちらに向かって歩いてきて、私の前でピタリと止まった。先程哉太を起こした時と変わらないような距離感なのに、どうしてこんなに心臓が煩いんだろう。

「ま…窓確認したなら帰ろう?」
「待て、逃げるな」

鞄を掴んだ私の手を、哉太の手が強く引いた。その反動で揺れる身体。掌から滑り落ちる鞄。鞄が地面に叩きつけられる音がする頃には、私は哉太の腕の中に居た。

「さっき、何考えてたんだ?」
「べ、別に」
「…身体の事か」

そう呟いた哉太の声音に思わず顔をあげれば、哉太はまっすぐに私を見ていた。その目が哀しみを含んでいるように見えるのは、きっと私の気のせいじゃないはず。だから…

「違うよ、哉太ってかっこいいなぁって思ってみてた」

誤解されてるなら早めに解いてしまおう。だってそんな目をさせていたくない。恥ずかしさよりそっちの方がずっと勝る。

「…は?」

予想外の答えだったのか、ぽかんと口を開ける哉太。

「も、もう言わない!」
「なんで怒ってんだよ!」
「怒ってない!ば哉太!」
「だ…誰がば哉太だ!」

こうなってしまったらムードもなにもなくなってしまって、いつもの二人に戻れるから安心する。気付かれないようにホッと息を吐いていたら、哉太が急に真面目な顔になった後、僅かに口元を緩めた。

「姫って、素直だよな」
「馬鹿にしてます?」
「してねぇよ、ただ…」

ただ、なに?と聞き返そうとしたら、顎をくいっと持ち上げられた。そのまま哉太の唇が私の唇に触れて…


「それ以上可愛い顔するなよ、優しくできなくなるだろ」


口付けた後、哉太は意地悪そうに笑った。






どういう意味ですか

(なに、哉太えっちー)
(ば…ばばばばかっ!そういう意味じゃねぇよっ)

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あままへ♪
Twitterのシチュ交換小説でした。
優しく押し付けるとか使ってないなぁ…スンスン。

20120605




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