恋愛スイッチ
僕の理性が切り替わるのは 君が触れるその箇所…
恋愛スイッチ
「かーずきっ、仕事終わった?」
生徒会室の扉を開けて、中の主に声をかけた。別に一緒に買える約束はしていないのだが、二人の間では暗黙の了解になっていて、それがなんだか無性に嬉しい。
「おぉ、姫。悪いな…もう少しで終わるから、待ってて貰って良いか?」
会長席には大好きな彼氏様。コップを片手に、書類に目を通しているようだ。
「はいはい。…眼鏡なんてかけるんだ?」 「ん?」
部屋に入り、一樹の元へと向かいながら尋ねる。普段は眼鏡などかけていないのに、座って仕事する彼の目元には眼鏡があった。
「仕事する時だけな」 「コンタクトにしちゃえばいいのに」
そう返せば軽快に笑われた。そして膝の辺りを叩いて私を招く。どうやらそこに座れ、と言うことらしい。大人しく一樹の膝に横向きに座れば、ぐっと距離を詰められて顔が近くなる。
「眼鏡ってさ、ギャップ感じてかっこよく見えないか?」 「一樹は元々かっこいいよ」 「お前…そういう恥ずかしい事さらっと言うなよ」
照れ隠しなのか、一樹に優しく髪を撫でられて、そのまま口付けられた。深くではなく軽く。唇を離せば、再び至近距離で目があう。
「まぁかっこよく見える、ってのは半分冗談で、ホントは気が引き締まるからってとこだな」
俺のやる気スイッチだ、と言われれば妙に納得してしまった。普段どちらかというとかっちりしているタイプではない彼が、こうして学園を纏め上げているのは、切り換えが巧いのも関係しているのかもしれない。 首に腕を回して、でも授業中はしてないよね、と言うと苦笑されてしまった。
「授業中は…誰かさんを見つめるのに必死だからな」 「また上手いこと言って…」
一樹が真面目に授業を受けているのは私が一番よく知ってる。そういうところも含めて好きになったのだから。
「でもさ、こんなことしてたら仕事終わらなくない?」 「大方は片付いてるんだ。颯斗にだいぶ助けて貰ったからな」
そう口にしながら二度目のキス。今度は先程よりも少し深く。
「苦い…」 「ははっ、珈琲飲んでたからな」
しかもブラック、と言われて甘党の私は舌を出して苦手を訴える。それを見てまた笑われた。
「月子ちゃん、珈琲淹れられるんだ」 「いや、これは俺が淹れたんだ。あいつが淹れると不味いのが出てくるからな」
私も一度月子ちゃんのお茶を頂いたけれど、確かに不味かった。でも、不味いのに何故かまた飲みたくなる味で…あれは多分月子ちゃんが一生懸命淹れてくれてるからなんだろうなぁと、飲みながら思ったのを覚えている。
「へぇ、珈琲なんて淹れたりするんだ」 「俺は珈琲には煩いぞ?今度ご馳走してやるよ」 「ホントに?」 「あぁ、だから今は拒むなよ?」
ブラックを飲む練習だ、と言われて深く口付けられた。首に回していた手に力が入る。
「っふ、かず…っ」
だんだんと深くなるそれに抗うように名を呼んだ。すると姫から少し離れて眼鏡を外す一樹。
「俺のやる気スイッチはこっちにもあったみたいだな」
唇を指しながら、彼は悪戯に笑った。
(、いまするの!?) (だからスイッチ入ったって) (ここ、生徒会し…っぁ!)
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あの眼鏡はだて眼鏡なんですかね… 気になります凄く。 似合ってるからどちらでもいいんですけど。
20120208
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