幸せそうに笑う君の隣は、もう僕のものじゃないのに。

当たり前すぎて気付けなかったなんて今更すぎる。
君が好きだ。






「今日でこの関係は終わりだ」

自分でもびっくりするくらい冷めた声が出た。俺自身がびっくりするんだから、当然目の前の姫もびっくりしている。

「うそ…」

思いっきり傷付いた顔を見せる姫。その顔が見たくなくて、ずっと一番近くに居られるこの曖昧な関係を守ってきた、でも…。

「嘘じゃない、」
「ねぇ…やだ…っ」

好きだと自覚してしまった。だからもうおしまい。これ以上一緒に居て彼女に触れていたら、今以上のやり方で姫に傷を残してしまいそうで怖い。自分の行動に歯止めが効かなくなって、姫を壊してしまうのが怖い。

「今のままがダメなら、付き合うから!ね…」

だから傍に居て、と姫は言う。その言葉に胸が痛んだ。姫が付き合うというのは、恋人になるとかそういうものじゃなくて、この関係の継続を意味する。姫も自分を好いては居てくれているのだろうが、その好きは果たして自分と同じものだろうか。

「じゃあ、キスしてもいいか?」

答えを聞かずに姫に迫る。手を頬に添え、瞳をジッと見つめれば、姫の目から涙が零れた。

「このままキスしたら後悔するだろ」
「そんなこと…っ」
「ダメなんだ、もう」

姫に触れたくて仕方がない。キスして口を塞いで、息継ぎの間など与えないくらいに口内を犯したい。姫を乱れさせて、滅茶苦茶にしてしまいたい。そんな欲求ばかりが渦巻く。

「お前が俺に望んでるのは、そういうのじゃないだろ?だからこれ以上は無理だ」

自分の欲深さに泣いた。欲しがらなければ、姫はずっとずっと笑顔を向けてくれていたのに。でも、本能が全てを手にしなければ満たされないと疼く。汚い人間だな、と自分を罵った。

「幸せになれよ」

頬から手を離して踵を返し歩を進める。姫は追っては来なかった。








あれから何ヵ月かして、久し振りに教室以外で姫を見かけた。教室でも、最低限の会話しかしない。姫は自分を軽蔑しただろうか、されていても仕方ない傷付け方をしたのだから、当然の報いだ。
彼女は変化を嫌った。変わらないと約束したのは自分だった。それを、最低な形で裏切った。

「……」

姫は宮地と一緒に居た。俺と一緒に居たときの、あの屈託のない笑みを浮かべて。宮地が姫を小突く。怒った姫が膨れっ面で宮地を睨む。俺と姫の、何ヵ月前かがそこにあった。




(幸せそうに笑う君の隣りはもう
僕のものじゃないのに。)





振ったのは自分、始める事を拒み、
全てに終止符を打ったのも、自分。

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不器用すぎて嫌だ。
彼は煩悩を押し殺して接してそうです。
で、嫌なことはしたくない、が最悪の形で姿を見せる。
うちの一樹は肉食系ですいません。
非常に下心のある仕上がりですorz

20120207




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