独り占め
私の特権 私の場所 誰かに明け渡したりしないで
独り占め
日が陰り薄暗くなってきた頃、トレイは愛しき人に教室に来いと呼ばれた。呼び出されるような事をしただろうか?色々考えたが、直接聞いた方が早いと教室に行ってみると、物凄く不機嫌そうな姿。いや、不機嫌…というよりは落ち込んでいる…?
「…」
静寂が煩い。なにか言わねばと名を呼べば、その声に反応したのかちらりと此方を見ると、ゆっくり此方へと歩を進めて来た。自分もケイトに近づく為に歩を進める。ちょうど机に挟まれた通路で、どちらともなく歩みを止める。
「どうしました?こんなじか…「ぎゅーってしていい?」
言葉を遮られてケイトから出た言葉はあまりにも予想外で…。思考が一瞬フリーズする。えぇっと…今なんと言いました?
「だから、ぎゅーってしていい?」
聞き間違えではなかった。滅多に彼女からはこういった甘えた行為は望んでこないので、ビックリ半分嬉しさ半分、にやける気持ちを抑えて大きく頷いた。拒むはずがない、寧ろ大歓迎っ!
「そうやって誰にでも許可してんの?」 「えっ」 「どうなの?」
どうしてこうなった。これが所謂持ち上げて落とすというやつか。いやいやそうではなくて…先程から驚かされっぱなしなトレイは目一杯持ち前の頭脳を使って考えた。
「誰にでも…とは、心外ですね」
今だって許可したのはケイトであったからで、もしもエースならお断りだ。そんな一部の人間に好まれる体質でもなく自分は…なにを考えているのだ。とにかく、ケイトがしたいと言うことはなんでもさせてやりたいし、今回のようなお願いは自分も嬉しいしで…
「ふぅん?昼間も女の子抱きしめてたわよね」
じと目でケイトに睨まれる。昼間…そんなことを自分はしただろうか…。…あぁ、確かに前方からシンクに思いっきりぶつかられて抱きしめたような。いや、あれは抱きしめたと言うより二次災害を事前に防いだと言うか…。
「口に出てるんだけど」 「ぁ、失礼。しかし、今お話した通りです」
自分は疚しいことはしていない。完全に事故だ。ケイトにもそれが伝わったのか、ため息のようなほっとしたような呼吸。
「…そっか。アタシの勘違いだったってわけね」 「そういうことです」
ケイトはそっかそっかと言いながらトレイの横をすり抜けて、トレイより一つ上段に立った。 そして、一段上でも自分より高いトレイにぎゅっと抱きつく。
「…するって言ったから」 「はい」 「別に意味はないんだからね」 「はい」 「アンタが許可したんだから」 「はい」 「…ばか」 「すいません」
ヤキモチを妬いていたんですね、とは言えず。代わりに謝罪の言葉が出た。事故であってもこの場はそうすべきだろうと判断したからだ。背に回ったケイトの腕に力が入る。一日不安にさせていたのだろうか。ならば、少しでも彼女が安心するように…トレイはぎゅっとケイトを抱きしめ返した。
(背、高すぎ) (すいません) (むかつく…)
------------------------ かいなんからお題を拝借して… トレケイトレケイ!
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