その目線の先に
君の瞳はいつだって輝いていること 僕はすっかり忘れていた
その目線の先に
「でさ、トレイったらね…」 「あぁ」
またこの話か。キングはため息をついて、目の前で目をキラキラさせながら話す姫を見た。最近の彼女の話は毎度トレイの事で。頭が良いだの戦場で助けて貰っただの。とにかくトレイとの出来事ばかり話され、特に意識していなかった姫への気持ちを露にさせられてしまった。姫がトレイを好いているのは承知だ、それでも好きなのだ。
(認める、しかないんだろうな)
しかし認めた後はどうすればいいのだろう。こんな気持ちになるなら、気づかなければよかった。ずっと分からない振りを続けていれば…
「キング、聞いてる?」 「…あぁ、」 「目が明後日の方向なんですけど〜?」
姫の顔が少し近づいて、見えてますか〜?と茶化してくる。顔を見るのがいたたまれなくなって、キングは顔を背けた。
「…怒ってる?」 「いや…」 「じゃあ何でこっち見ないの?」
ねぇ、と更に距離を詰められる。心拍数が上がって自分のものじゃないような鼓動が煩い。聞こえてしまうのではないかという距離まで姫が近づいてきたとき、漸くキングは口を開いた。
「トレイが、好きなのか?」
聞いた後でとんでもない事をしてしまった事に気がつく。聞いてどうするのだ、好きだよと言われて終わりか。姫はびっくりしたように目を開いて固まっている。姫がびっくりするなよ、自分の気持ちだろ。
「…すまない、忘れてくれ」
場の空気に負け、謝罪。普段の自分からは考えられない行動。情けない、他の奴等に見られていたら死にたい。
「私が好きなの、キングだよ」 「……」 「……」 「…今、」
何て言った?キングは自分の耳を疑う。姫が好きなのは、自分?では何故トレイの話ばかりだったのだろうか。
「話題は何でも良かったの。キングとお話したくて…」
どうやらトレイの4キロ先の敵を撃ち抜いた話にキングが食い付いたため、トレイの話題ならば会話が弾むと勘違いしたらしい。どうリアクションしていいのかわからない。とりあえずトレイの事が好きなのは自分の誤解だったようだ。
「こんな事言われても困るよね。うん、ごめんね!ちょっと頭冷やしてく「俺も、好きだ。好きなんだ、姫」
キングの前から立ち去ろうとする姫の腕を捕まえて、自分の方を向かせる。その目はうっすら潤んでおり、不安にさせたのだなと悟った。
「え…えぇ?そんな…だって」
つまらなさそうに相槌打ってたから嫌われたかなって不安だった、と姫。互いの微妙な受け取り方の違いを悔やむ。こんなに近い場所で絡まっていたなんて。
「好きな奴が他の男の話をしていて楽しい奴なんていないさ」 「ぅ…でも…」
まだもぞもぞと何か言いた気な姫。やっと気持ちが通ったのに、また絡まるなんてごめんだ。キングは手を姫の頬に当て、ぐっと顔を近付けて
「俺の事が信じられないのか?」
と、姫の目を見て言った。彼の視線は、もう姫から外されることはない。
(勘違いから始まる恋?) (ヤキモチ、かもな) (っ!!)
------------------ お題は『キングが頬に手を当てて「俺の事が信じられないのか?」と言う焼きもちの話』という診断メーカーから頂いたものでしたっ はるのんに捧ぐ!
20120127
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