ポニーテールと…
綺麗な髪は 女の子の憧れなのです!
ポニーテールと…
「エースっ」
この声だ。猫なで声というか甘えたような声というか。姫がおねだりをする時に出す声。大抵ろくなお願いをされない。今回もきっとろくな事を頼まないんだろうなと、聞こえない振りをしていたら肩を掴まれた。
「無視なんて酷いなぁ…泣いちゃうよ?」 「…姫」
涙を見せる素振りなんて全くない。いっそ一思いにやってしまおうかとも考えたが、一筋縄ではいかない姫の相手を、わざわざ自分からするのも馬鹿げているのでグッとこらえる。
「今日はなんだ?」 「ぁ、聞いてくれるの?珍しいな」 「…先を急ぐ」 「あぁぁぁごめん!ごめんなさい!これっ!これを着けていただきたく!」
そう言って姫が差し出した手には可愛らしいリボン。所謂髪を結ったときにつけるような、間違ってもエースがつけるものではないような。
「お前は馬鹿か」 「なにそれひどい!ね!つけてお願いっ!」 「断る。絶対につけてやらない」
毎度毎度よくこんな事を…、エースは深いため息をついた。姫は僕の性別は男だと知っているはずで。この前はフリルのついた服だったな…などと頭を抱えていると、少ししょげた姫が自分の髪を結おうとしていた。
「なんだ、諦めたのか」 「うん、エースも嫌だよね髪結うなんて…ごめんね」
急にしゅんとして自分の髪と格闘し始めた姫。諦めてくれればそれでいいのだ。しかし目の前でぎこちない手つきを見せられ、上手く結べずに更にしょげる姫を放っておくのも…。仕方がない、このまま泣き出してしまうのを見ているのも可哀想だ。
「本当に馬鹿だな、姫は」
姫が結ぼうとしていたリボンを取り上げ、さっと手櫛で髪を束ねる。少し髪が短いが大体まとまれば良いだろう。手頃な高さでリボンを留め、姫の方を向いた。
「結んだぞ、これでいいのか?」 「か…」 「か?」 「かわいいちょーやばい食べちゃいたいエースぅぅぅ」
姫はエースに飛び付きまじまじと顔を覗き込む。手櫛では纏まりきらなかった毛束が顔に掛かり、なんというか色っぽい。うんうん、流石美少年エース様!
「ほんとに優しいよねエース、大好き!」 「その大好きはあまり嬉しくないが…」
曖昧な笑みを浮かべるエースを見つめながら、姫は本心を伝えなくて本当によかったと心から思った。
『私の髪を結って欲しかったなんて今さら言えない…』
(ところで、今日はこれから出掛けるんじゃなかったのか?) (うぅ…だから私の髪を結って欲しかったのよ…) (…?なにか言ったか?) (なんでもないよ!)
--------------- 八郎たんの妄想を頂いてエースの髪結いっ! 真面目には書けなかったよ、私。 ギャグでごめん;ω;
20120127
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