ベリーベリー

自分の欲求は
周りに伝えておくに限るっ!











「姫…これは」
「ぁ、トレイ!トレイも一緒に食べよ〜?」

姫の目の前には紅が印象的なスイーツが沢山。こんなにどうしたのかと聞けば、候補生からの差し入れなのだそうだ。以前リフレッシュルームで、甘いものが食べたいーと叫んでいた姫を何度か目撃している。

「苺のが沢山あるでしょ?私ね、苺大好きなのっ!」

流石、旬ものだから出回るんだねと言う姫。物凄く笑顔でそう告げてくるのだが、気になることが一つ。

「苺が…旬、ですか?」
「そうだよ!クリスマスが近づくほど苺のスイーツが増えるじゃない?」

お店にも沢山並ぶのよと、目の前のスイーツを見せるように手を広げた。なるほど、確かに苺のショートケーキやら苺のムースやら…最初に目についた通り苺の紅が主張するものばかりだ。しかし…

「姫、それは違いますよ。苺の旬は冬ではなく初夏、炎の月の頃です」
「えぇ…冬の方が沢山出回っているイメージなんだけど」
「それこそ先入観です。そもそも冬に苺が出回るのは、姫と同じくクリスマスシーズンと言えば苺、というイメージが根強い人々の為に冬にハウス栽培などをした物が売り出されるからであって…」
「あぁぁぁ!わかった!すごく分かった!」
「…そうですか」

気持ちよく解説するのを姫に話を遮られ、残念そうにするトレイ。だが、何かを思い付いたのか再び口を開く。

「では、苺の花言葉は知っていますか?」
「うーん、あんまり聞かないかも」

姫は首を傾げながら、目の前のスイーツ
を見つめる。女の自分よりも女の子が好きそうな事を、トレイに教えて貰うのは気が退けたけれど、気になる気持ちを抑えきれずに尋ねてみた。するとトレイは満足そうな笑みを浮かべ、目の前の苺のショートケーキをフォークで突き刺しながら、姫の前に差し出す。

「『無邪気』や『尊重と愛情』など、受けとると嬉しい言葉が多いんですよ」
「いい花言葉ね。これをくれた人はそういうの知らなさそうだったけど、そう思っていて貰えたら幸せだなぁ」

姫は差し出された苺を頬張りながら、その甘さからか、トレイに教わった言葉からか笑みを浮かべた。どうして人に食べさせて貰うスイーツはこんなに美味しいのだろう。

「他にもありますよ。『誘惑』や『甘い香り』など、苺に魅せられてしまう理由として挙げたいものですね」
「う…確かに。さっきから結構食べちゃってる…」

目の前の皿を見れば、貰ったときより半分ほど胃の中に収まってしまっているようだ。これはまずい。後で体を動かさなければ、余分な肉がついてしまう。

「トレイ、ちょっと飲み物貰ってくる!待ってて!」

視界から甘い誘惑を消そうと席を立ち上がる姫。それを見送った後、目の前の姫の食べかけていたスイーツから苺を一つ。フォークに刺して見つめる。

「本当はまだ意味があるんですよ。苺の親株から多くの蔓が伸びている事から『幸せな家庭』。ですが、私が最も伝えたかったのは…」

トレイは姫が去った方を見つめながら、苺を口に入れた。






『あなたは私を喜ばせる』







(トレイ〜!紅茶!紅茶持ってきた!)
(姫に伝えるにはまだ早そうですね)

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0組企画提出作品。

20120127




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