その姿すら魅せられる
隣に眠るマイの髪をさらりと撫でれば、ふんわりとシャンプーの香りがした。 つい数時間前、この香りに酷く魅せられてマイを組み敷いた事が思い出される。
「…………」
自分の理性も脆くなったものだ。一度崩れてしまえば持ち直すことは難しくて、マイの初めてを奪ったあの日を境に、理性のリミッターが簡単に触れてしまう。 あんなに耐えていたのに…そう思わずには居られないほど、最近の自分はマイを求めてきた。 まるで、今までの隙間を埋めるように。
「……ん」
マイが小さく身じろぐ。 風呂上がりを襲ったから、ドライヤーを当てなかった彼女の髪はきっと、起きる頃にはあまりいい状態にはなっていないんだろうなと苦笑。 俺としては、見た目に気を使っていなかった頃が思い出されて微笑ましいんだけど、マイは複雑みたいだ。
「そういえば、前にも怒られたっけ」
今日と同じように寝入ってしまったマイが朝起きた時の事を、ふと思い出した。
「トーマのばかばか!」 「だから悪かったって。ってか今更でしょうが…お前の寝起きなんて、小さい頃からずっと見てるよ?」
俺がそう言うと、顔を真っ赤にするマイが可愛い。 なに照れてるんだか…と思いつつも、どこかでこの反応を期待してしまっている自分は相当タチが悪い。
「む…昔とは違うの!」 「そう? 俺はなんか懐かしくて好きだけどね、手入れとか気にしないお前」
同じ時間だけ理由で化粧とかもあんまり好きじゃなかったりする。飾らなくたってマイは本当に魅力的な女の子だから。
「それじゃダメなの…」
ぽつり…と消え入りそうな声で呟くマイ。なにが?と返そうとしたら、ぎゅっと服の裾を掴まれた。
「と、トーマに…妹じゃなくて、女の子として見て欲しいから…っ」 「お前…」 「可愛い妹じゃ嫌…私はトーマの…っ」
続きを紡ごうとするマイの唇をそっと塞ぐ。 本当は最後まで聞きたかったけど、全部聞いたら朝から色々我慢出来なくなりそうだから…
「分かってる…お前の事、妹だなんて思えた事一度もないから」
いつだって大好きな女の子だった。 成長していって、この気持ちが恋だとわかった時には、もう手離せないくらい大きくなっていて、それは付き合い始めた今も決して衰えはしない。
「好きだよ、一人の男として…お前が好き……」
もう一度触れた唇は、酷く甘い味がした。
その姿すら魅せられる
(だってドライヤー使えなかったのは) (俺が求めてお前が応えたから…だよ?)
--------------------------------------------
20120805
|