その先に残るのは、呼吸のあと







何度渡り歩いたのか。
俺は一体どの辺りまで堕ちたのか。
そんな事には興味を示さなくなってしまった。
もう自分の立ち位置なんて考えても仕方がないから。

あの日、マイを失って世界が終わった。
そこで、終わらせておくべきだった。
嫌だ、嫌だ…と、あの時感じた孤独感は、幾度となく訪れる死の感覚によって、曖昧なものへと変わっていく。
それでも俺が全てを忘れられないのは、世界を跨ぐ先にあるマイの笑顔を何度でも見るから。

安息の日はなくて、悲劇と呼ぶにはあまりにも自分勝手な殺戮劇。
マイに全てを話してしまいたかった。
伝えてもきっとマイはビックリするだけだろうけど、話すことで俺は楽になりたかったんだ。


一人で抱え込まないで…


そうマイが言ってくれる事を願う甘さ。
そんな願いを持つ資格もなく、紅で濡れた手をぎゅっと握りこむ。

つらい、痛い…怖い。

そう思えるのは、俺の中に残された人間としてのらしさ。
手掛けたマイを前にして、また今日も終われなかった世界を嘆く。
次の世界では間違えないから…そう呟いた言葉は、いつかマイに届くのかな。



いくつか世界を渡り歩いた先で、気付いたことがあった。
どの世界でも、マイは笑っているのだということ。
その笑顔が、本当に幸せそうだということ。

…病院の窓から見えたマイは心から笑ってた。
幸せに…なって欲しいと、心から思った瞬間だった。
俺が居なくても、マイは幸せになれるから、だからもう…いいんだ。
偽日になって、君の幸せを願うよ。

見計らったかのように、柵が折れて…俺は地に叩きつけられた。






その先に残るのは、呼吸のあと

(俺が、幸せにしたかった)
(俺じゃなきゃダメだって…)
(君が言ってくれる事に焦がれた)

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某曲を聴いてウキョウさんだなぁと思って書いてみました。

20120812




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