07
「あれ?一樹珍しいね」
大学の食堂でぼんやりと昼食をとっていたら誉に声をかけられた。同じ大学に居ながら、俺がふらりと放浪したりするもんで、誉とは高校時代のように頻繁に会話することはなくなってしまったから、こうして逢うのは久しぶりだ。
「春からずっとこっちなの?」 「あぁ、海外ばっかり飛んでたらまた留年しちまいそうだしな」 「ふふ、確かに笑えない冗談だね」
誉は昼食の乗ったプレートを俺の席の前に置いた。こうして昼食を共にするのも、随分久しぶりな気がする。
「誉の方は相変わらずか?」 「勉強しながら茶道の講師。この間、宮地君たちの大学にも行ったよ」 「ほぉ…元気そうだったか?卒業して以来全く話を聞かないな。颯斗や翼とはたまに連絡をとるんだが」
誉が来る前に昼食はとってしまっていたから、食後の珈琲を啜りながら誉が箸をつけるのを見つめる。すっかり冷めてしまった珈琲…やはり飲む前に煎れなければなと小さく後悔。
「みんな元気そうだったよ。夜久さんが女の子と歩いてるのには少し驚いたかな」 「星月学園と違って共学だもんな」
そう言って今朝の姫の事を思い出した。天文科で講義を受けているなら、もしかしたら月子とも仲がいいのかもしれない。
「一樹もこっちにいるなら逢いに行ったら?」 「考えとくよ」
それから暫く誉と談笑して、俺は午後の講義に向かった。姫も昼食をとっただろうか、そんなことを考えながら…
20120326
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