02
「一樹っ!また来たの?」
姫と初めて逢った日以来、俺達はよく話すようになった。 と言うのも、引っ越してきたあの日に姫に『ご飯まだですよね?お昼ご飯になっちゃいますが、良かったらなにか作りますよ』と誘いを受けたことに始まるのだけど。
「一人だと自炊すんの怠いんだよ。ぉ、今日はハンバーグか!」 「ぁ、ちょっとっ!」
姫が作っている料理から摘まみ食い。うん、やっぱり美味い。 初日にご飯をご馳走になって以来、休日や時間の合いそうな日は一緒に食卓を囲むようになった。勿論作らせてばかりでは悪いので、たまには外食に誘ったりなんかして。 一人暮らしで一番寂しいのは、誰かと食卓を囲めないこと…それは姫も同じだったのかどうかは分からないけど、俺の誘いに快く乗ってくれた。
「もう…まだ出来てないのに…」 「難いこと言うなよ、美味いぜ?」 「褒めても何も出ませんー。はい、これ持っていって」
気が付けば初日には無かった俺用の食器が増えていたりなんかして、知らないところで気を使ってくれているのが窺えて笑みが漏れる。まぁ来客用、と言われればそれまでなのだけど。
「…そういえばお前、彼氏いんのか?」 「ぶっ!!ごほ…っ」
食卓を囲んでいただきますをした直後、俺の質問に姫は味噌汁を吹き出した。
「おまっ!汚ぇな…」 「か…一樹が変なこと言うからでしょ!」
姫は飛んだ味噌汁を拭きながら、少し顔を赤らめている。思えば引っ越してきて何ヵ月か、学校には行っているようだったが姫の交遊関係は謎に包まれたままだった。
「…そういう一樹は、どうなの?」 「俺は…聞かなくても分かるだろ?」
休日に昼まで寝てるような暇人に彼女が居るわけがない。そういう意味で言ったのに、姫は違う受け取り方をしたようだ。
「ぁー…確かに、かっこいいもんね…不覚だけど」 「一言余計だぞ、お前」 「だって事実だし」
笑いながら姫は、流しの方に汚れた布を持っていった。…もしかして流された? その後は、いつものように他愛のない話をして、遅くならないうちに姫の部屋を出た。
20120323
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