01
「……」
気が付いたら朝だった。窓から入る陽の量を見ると、朝というより昼に近いのかもしれないが。 星月学園を卒業して早1年。大学に進学して一人暮らしを始めた頃は色々忙しかったけれど、次第に慣れてきた今では休日の朝はいつもこんな感じだった。 頭をガシガシかきながら、洗面台に向かって顔を洗う。星月学園に居た頃とは少し変わった顔。あの頃感じていたわくわくやドキドキといったものが、最近の俺からは完全に失われていた。 勿論今の生活が嫌なわけじゃない。勉学に励み、将来に目標を持って生活しているのに、それでも何故か心に空洞が出来ていた。
「……ん?」
そういえば先程からトラックの音が聞こえてくる。引っ越しか?時期的にも4月からの新生活に向けての一人暮らし、と考えれば妥当だが。
ピンポーン!
その時、備え付けていたインターホンが来客の到来を告げた。 タオルで顔を拭き、特に気にもせずにドアを開けると、そこには見知らぬ女の姿。
「ぁ、すいません…寝てました?」 「いや、気にすんな」 「…寝癖ついてます」
くすくすと笑いながら俺を見つめる女性。こんなに綺麗な笑顔を見たのはあいつ以来だった。
「ほっとけ、…で、お前誰だ?」 「すいません…そうでした。私、隣に越してきたプリンセス姫です。ご挨拶に伺いました」
プリンセス姫、そう名乗りぺこりと頭を下げる彼女。やはり似ている、星月学園に俺が置いてきた大切な者達が纏うそれを、彼女も持っている…そんな気がした。
「プリンセスさんね…、俺の名前は不知火一樹。歳そんなに変わんねぇだろ、一樹でいいぞ」 「じゃあ私の事も姫って呼んでください、えっと…一樹さん」
少し照れながら俺の名前を呼ぶ姫。 桜がまだ蕾を付け出したばかりの、そんな季節の変わり目に…俺達は出会った。
20120323
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