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「嘘…なんで…」 「誉からのメール、見なかったのか?」 「見たよ!だからこうして…」
迎えに来たのに、なんで私が来た道にいるの? 疑問符が飛び交う頭でなんとか答えを出そうとするのに、一樹に逢えた喜びがそれを邪魔してどうしようもない。
「一度帰ったら、大家さんにお前が急いで出ていったって話を聞いたんだよ。ったく…こんな雪の中、外出るか?普通」
そういえば、階段で転びそうになったときに大家さんに会ったっけ。
「ほら、帰るぞ。そんなところで突っ立ってたら風邪ひく…」 「…それだけなの?」 「、何いって」 「私は、逢いたかったよ…」
メール見て飛び出しちゃうくらい逢いたかった。 寒さとか忘れるくらい、一樹の事しか考えてなかった。 なのに…
「…ごめん、なんでもない。家帰ろっ…」 「、ばか!」
同じ気持ちじゃなかったんだな、ってがっかりしてたら視界が真っ暗になって。 なんかちょっと息がしにくいなって思ったら、一樹が私を抱きしめていた。
「…なんでお前は、そんな可愛いこと言うんだ。誤解するだろ…」
誤解…誤解ってなんだろ。 でも、抱きしめてくれるなら期待してもいいのかな?
「すきだよ」
もう伝えないままさよならは嫌だから、ちゃんと伝えよう。結末がどうであっても、やっとこれで進める。
「…………」
一樹は何も言わないまま私を抱きしめていて。抱きしめられてるから表情は見えないし、思い切って上を向く勇気もないし。
「…ごめんな」
頭上から降ってきたのは謝罪の言葉。 あぁ、振られたんだなって確信した。
「いや、私の方こそ…っ」 「あの日、姫の事は諦めようって思ったんだ」 「…そっか」 「無かったことにして、一時帰国の時もマンションに帰らないようにして…姫の事忘れたふりしてた」 「一樹…?」 「でも、あっちにいる間も忘れるなんて出来なくて、…ここに来た」
一樹の話がうまく飲み込めなくて、聞き返したいのにそれをさせてくれないもどかしさ。けれども、次の言葉でもどかしさが消えた。
「姫が好きだ、愛している」
驚いて思わず顔を見上げてしまった。交わった視線の先に映る真剣な顔の一樹に一瞬呼吸がとまる。
「…遅いよ、ばか」 「ごめん…」 「私が好きじゃなかったらどうしてたの」 「そうだな…多分、」
抱きしめていた腕を緩めて、頬に手を添えられた。その手の冷たさに驚いていたら、そのまま唇に口付けを落とされた。
「姫が俺を好きになるように努力…した、かな」
言葉の後には自信に満ちた笑み。でもそれが嫌じゃなかった。一樹をぎゅっと抱きしめてみれば、緩めた手に再び力が入る。
「ほんとバカ…」 「そんなどうしようもないバカが好きなんだろ?」 「前言撤回しようかな」 「おい…っ」 「嘘だよ、だから…」
(ねぇ、幸せにしてね?)
--------------------------------- 長かった連載に終止符を…。 とりあえずはこれで完成です。 これを書こうと思った目的が、星月学園に全く関係ないヒロインを書きたい!だったので、個人的に満足してしまいました。 続編…とかは全く考えていませんが、その後みたいなのはあったほうがいいのかな。 初めて長編書き終えました…達成感…笑
20120604
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