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降り積もる雪、雪が音を吸い込んで無音の空間を作り出す中で、私が雪を踏むザクザクという音だけが響いた。勢いよく駆け出したものの、階段を降りてすぐに転びそうになり、逸る気持ちを抑えて早足で歩く道。
いつかこの道を二人で一緒に歩いた日の事をぼんやりと思い出せば、気持ちに拍車がかかって足が縺れそうになった。
「…一樹っ」
逢いたい。
一面が白で覆われる中で探す貴方。
駅の方にひたすらに歩いていたけれど、もしかしたらタクシーを使っているかもしれない。
不安が胸をぎゅーっと締め付けるのを堪えて前を見据える。
やっぱりいない。
「…っ、帰ってこい!バ一樹!!!」
精一杯叫んだはずなのに、思ったより声にならなかったのは積もる雪のせいなのか。声を荒げたら息が苦しくなった。何度か呼吸をしても、うまく息を整えられなくてもどかしい。
「…誰がバ一樹だって?」
…振り返ったら、貴方がいた。
20120604
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