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あの日、一樹に逢えなかったあの日から2年半が過ぎた。 少女漫画のように、お前に逢いに来た!なんて展開もなく、本当に何も無かったかのようにただただ時間だけが過ぎていく日常。 変わらないことと言えば、隣の家は留守中…だと言うこと。それはつまり、いつか帰ってくるという事だと思って良いのだろうか。 そんな風に考えたら、いきなりインターホンを鳴らして「晩御飯食べに来たぞ!」なんて笑う彼が浮かんでしまって、変に期待してしまう。
「4回生の冬…そろそろ諦め時かな…」
幸いにも就職は早期に決まっていて、勤務先の関係で春にはここを出ていかなければならないことが決まっていた。 外にちらつき始めた雪が確実に冬の訪れを告げていて、私に残された時間の無さを浮き彫りにする。
「もうあっちでヨロシクやってるかもしれないしね」
口にして後悔。 出来たら、ううん…お願いだからそれはあって欲しくない。本当に勝手なお願いだけど、それは嫌だ。 逢えない間に想いだけが募った。彼女の存在だとか、そんなもの気にせずに好きだと言えばよかった。そうすれば、2年半もの間待ち続けることは無かったのに…
〜♪
「っ!?」
その時、急に携帯の着信音が鳴り響き、私は慌てて携帯を掴んだ。 ディスプレイには、誉さんからのメールを告げる文字。 急いで用件を確認した私は、コートを付かんで駆け出した。 外は、いよいよ雪が本格的に降り積もろうとしていた。
『一樹にはもう逢ったかな? さっきまで大学で少し話していたんだけど。 一度家に戻るらしいよ。』
20120506
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