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彼女の言葉を聞いて、あぁなるほどな…と納得してしまった。
「誉さん?」
「あ、ごめんね。うん、知ってるよ。一樹は今も同じ大学だし、学生時代からなにかと関わりがあったからね」
関わりがあった、なんて言うような関係でもないか。今こうして、僕が僕らしくあるのは一樹のおかげだし。
それより、多分姫さんが…そうなのだろう。
一樹が留学を渋っていた理由。
「どこいったか知りませんか?」
「残念ながら、一樹はフラッと出ていって突然戻ってくるんだよね」
「そうですか…」
「役に立たなくてごめんね。でも、一樹がこんなに長く大学にいたのは初めてだったから、僕もビックリしてたんだ」
「それ、大家さんにも言われました」
一つため息をついて、姫さんはとても悲しそうな顔で笑った。その表情は、星月学園にいた彼女に少しだけ似ていた。
「電話は?かけてみた?」
「電源切れてて…もう飛行機の中なのかもしれませんね」
「そっか…」
その後は、うまく慰めることも叶わなくて、結局彼女を暗い表情のまま送り出すことになってしまった。
20120507
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