15
激しく打ち付ける雨に眠気を持っていかれてしまった。あの日から1週間がたった今日、外は大雨で、小さくだけど雷もなっているのが聞こえる。
「雷…やだな…」
あの光も音も、心の底から嫌いだった。一瞬で不安を呼び起こしてくる感覚、ドキドキと心臓の鼓動が早くなって恐怖に支配される脳。 一人暮らしなら必ず体験しなければならないであろう出来事に直面して、私はパニック寸前だった。
「どうしよう…、誰か…っ」
誰か…と呟いて一番に浮かんだのは一樹の姿。いつもなら彼女に悪いと躊躇う連絡も、雷の恐怖に支配された脳には考える余地がなくて、震える指で電話をかけた。けれども、受話器からはコール音だけが虚しく響いた。 そうしている間にもどんどん雷が近付いてきて、私の心臓はこれでもかと言うほど脈を打ち鳴らしている。 恐怖に耐えかねたその時、携帯の着信音がなって、思わず身体が跳ねた。思った以上に音に敏感になっているようで、慌てて着信をとれば受話器から一樹の声がした。
『どうしたんだ、お前から電話なんて珍しいな』 「ぁ、ごめん。寝てるかなと思ったんだけど…ちょっと、」
言葉が続かなかった。雷が怖いから部屋に来てくれ…なんて言えるわけがない。気を引きたい女の子のすることみたいじゃないか。 すると、先程よりも大きい雷の音がして、私の恐怖は一気に駆り立てられた。
『姫?お前…泣いてるのか?』
言われて、頬を伝う雫に気がついた。
「ゃ…あの、これはっ」
否定しようと口を開けば、通話を切る音がして、すぐに玄関の扉が乱暴に開く音がした。
「姫!」 「かず…っ」
ばたばたとこちらに向かってきて、有無を言わせずに私を抱きしめる彼に、私は心からの安心感を得た。
20120409
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