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この間春が終わったと思ったらもう蒸し暑い。一樹が帰った部屋で一人窓から星を眺めながら、私は先程の事を思い起こしていた。
「諦めようなんて、簡単にいくわけないのにね」
引っ越してきたあの日から、私は一樹の事を気にかけていた。単にかっこいいから、だけじゃなくて、私のご飯を食べて美味しいって笑ってくれるところとか、異性だって感じさせない感じが一緒に居て楽で。…気が付いたら好きになってた。
「だめだめっ!この片想いは不毛すぎる…」
きっと一樹の事だから、彼に見劣りしない美人な彼女がいるはず。まだアパートに来ているのを目撃したことはないけど、一樹が彼女のアパートに行ってる可能性だってある。そう考えて、ふと気がついた。
「…そっか、別に特別じゃないんだね…私は」
ご飯を美味しいって言ってくれるのは、何も私に対してだけではないのだと。彼女の手料理だって食べてるだろうし、もしかして比べられてたり…だったらやだな。
考え出したら悪い方にしか頭が働かなくて、その晩はあまり眠れなかった。
20120409
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