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あの春から、全ては始まってた。
ねぇ、もうそろそろ正直になってもいいのかな…一樹






「ありがとうございました!」

4月、大学に入ってから2回目の春。
1年目は実家で甘えた生活をしていたけれど、20になる今年こそは自活しよう。そう決めて越してきたアパート。引っ越し業者に一通り荷物を運んでもらって、部屋らしくなった部屋を見て笑みが溢れる。
なにもかもが始めててわくわくする気持ち。家具もそれなりに気に入ったものをチョイスして自分好みの部屋にした。

「…そう言えば、お隣さんに挨拶に行かなきゃ」

小物の片付けはまだだけど、日が落ちる前に済ましておいた方が良いかなと思って玄関を出る。隣の表札に書かれた不知火の文字。なんだか珍しい名前だなぁと思いながらもインターフォンを押せば、眠たそうな男の人。
社会人かな?だったらせっかくの休日を邪魔してしまったのかもしれない。

「ぁ、すいません…寝てました?」
「いや、気にすんな」
「…寝癖ついてます」

笑っては失礼かなと思ったけど、どうしても気になって告げれば照れ隠しをするような表情。ぁ…なんかかっこいいな、それが第一印象だった。

「ほっとけ、…で、お前誰だ?」
「すいません…そうでした。私、隣に越してきたプリンセス姫です。ご挨拶に伺いました」

一礼すればじっとこちらを見てくる瞳。なんだろう、自己紹介…変だったのかな。少し不安になって見つめ返せば、彼…不知火さんもまた名を名乗ってくれた。しかも呼び捨てで良いからと言うので、私も名前で呼んで貰うことにした。

「そう言えば、ご飯まだじゃないですか?…寝起きみたいだし」
「あぁ…まぁそうだな」
「良かったらご馳走させて下さい。部屋、まだ散らかってますけど」

正直初対面の男の人を上げるなんて危ないかな?とも思ったけど、一樹さんは大丈夫。そんなよくわからない根拠から、私は彼にお昼ご飯を振る舞うことにした。






20120409
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