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「大した意味はないんだ。ちょっと月子とは色々あってな、娘みたいなやつなんだ」
「なるほどね…さて、私は帰ろうかな」

俺と月子の事には勘繰りなしか…と少し残念になる心。でも、それは姫が俺をなんとも思っていない証で、晩御飯の礼を言えば姫はあっさりと部屋に帰っていってしまった。
…もっと昔の話をすればよかったのか?いや、違う。
話したかったんじゃない、知りたかったんだ…姫の事。けれど、俺が知らない部分を知るのが怖い気持ちが邪魔をして聞けなかった。

「俺は本当に、あいつのことなにも知らないんだな」

俺が知っていることと言えば、料理が上手くて雷が苦手な事くらいだ。結構一緒に居たのに、姫の年齢すら知らなかった。

「もう、諦め時なのかもな」

不毛な恋はしない、恋愛なんてそもそも興味がないんだ。柄じゃない。気が付けば夏はそこまで来ていて、長期休暇が始まろうとしていた。
姫が引っ越してきてから一度も放浪に出ていないことを思い出して、諦めるのにも、忘れてしまうのにもいい口実を思い付いた。

食べ終わった食器を片付けて、クローゼットからスーツケースを取り出す。決めたら行動は直ぐに起こした方がいい。
姫へと募る気持ちを詰め込むように、俺はスーツケースに旅の支度を始めた。






20120409
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