09







部屋に上がった姫は、開口一番『汚い!』と声をあげた。そりゃあまぁ姫の部屋からしたら汚く見えるかもしれない。掃除も面倒だし。

「ご飯暖めるよ、レンジ貸して」
「おぅ、悪いな」

それから姫の用意してくれたご飯を食べて、その間姫は散らかった俺の部屋を見ながら少しずつ物を整理してくれた。

「すっごい新聞の量なんですけど…」
「毎日届くからな」

あちこちに散らばる新聞を一ヶ所に纏めながら姫はため息をついた。確かにこの量は俺でも流石に片付けなければいけないと思う。

「でもなんか意外かも」
「なにがだ?」
「新聞とか…読むんだなぁって」
「お前な…俺これでも法学科だぞ?」

そう言うと、予想通り驚いた表情。星月学園に居たときは親父だなんだ言われていたから、珈琲に新聞が板についていたけれど、卒業してしまえばそんな面影どこにもなかった。

「法学科か…頭いいんだ」
「半分コネみたいなもんだけどな、高校で生徒会長やっててさ」
「…そっちのほうがもっと意外」
「これでも結構人気あったんだぞー俺」

全校生徒の尊敬の眼差しが懐かしいな、と言えば、姫はふーんと流した。その反応は、信じてないんだろうなぁ。

「やっぱりモテたんだね〜」
「いや…元男子校だからな。姫が想像してるような黄色い声援はなかったな」
「へぇ…、ねぇ…もしかしてそれって星月学園…?」

姫の口から出た言葉。なんとなく、いつかこの話題が出るだろう事は予測できたはずなのに、俺は咄嗟に返す言葉が見付からなかった。






20120326
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