まだ一人で眠れない







暗い夜道を全力で駆け抜ける。どこに向かっているのかは安易に想像がついた。だってもう何度も見た夢だから。夢であって、けれども実際に俺が犯した過去の罪。
ほら、扉を開ければそこに彼女が居て、俺はまたやってしまったと自分を責める。それからあいつらが来て、それから…それから…


「…はぁ」

寝覚めの悪い朝だった。朝と言うにはまだ少し早いのかもしれない。外はうっすらと明るくなり始める頃で、起床までにはまだだいぶ時間がありそうだ。
姫が隣で笑っていて、それが本当に幸せで。なのにこうしてまだ一人で眠れない俺が、あいつを幸せに出来るんだろうか。
東月に宣言されたあの言葉。

「先輩の大切な人、全力で壊しにいきます…か」

また俺は大切な存在を傷付けてしまうんだろうか。…嫌だな。だからと言って手放せなどしない。大切なんだ、本当に。守れるなら、姫が傷付かずに済むならなんだってしたい…そう思うほどに。

「東月…頼むよ…」

恐ろしい程に力のない声。どうすれば守れるのだろう。どうすれば失わないんだ?どうすれば…どうすれば…


結局起きてしまってからは寝付けなかった。眠気は酷いくらい飛んでいるのに、頭の中がぼんやりとしている。思考回路がおかしくなったのだろうか…

「…おかしくもなるよな」

苦笑しながら呟いた言葉は、無音の部屋に散って消えた。






(悪夢と称するのは間違いだ
夢なんかじゃないんだから)

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20120405




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